第五章
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「えっ、亜美が小さい!?」
「嘘でしょ」
「こんなに背が高いのに」
「それで小さいって何よ」
「何かの冗談でしょ」
「いえ、本当なのよ」
実際にそう言われたこともだ。亜美は話した。
「だって。彼のお母さんやお姉さんもね」
「大きいから?」
「だからそう言われたの」
「小さいって」
「彼のお母さんやお姉さんも彼より大きいのよ」
一九〇以上ある彼よりもだというのだ。
「それなら一七〇位の私なんてね」
「小さく見えるのね」
「それでも」
「そうなのよ。正直信じられなかったわ」
亜美はその時生まれてはじめて自分が小柄と言われたのだ。このこともはじめてだったのだ。そのはじめてのことに驚きを隠せなかったのだ。
「嘘みたいだったわよ」
「嘘っていうかね」
「有り得ないっていうか」
「話を聞いてる方もびっくりよ」
「凄いお家もあるわね」
「そうでしょ。それでね」
ここまで話してだ。亜美はここでだった。
何かを悟った顔になりそのうえで皆に言った。
「背が高いとか低いとかってね」
「それは?」
「それはっていうの?」
「そう。相対的なものでね」
小さい中に入れば大きい、大きい中に入れば小さい、そうしたものだというのだ。
「特に意識することなかったのよ」
「じゃあ亜美のその背の高さも」
「気にしなくていいっていうのね」
「そういうものみたい。それがわかった気がするわ」
その悟った顔での言葉である。
「そんなの気にしなくていいのよ」
「じゃあこれからはね」
「そういうこと考えないで彼氏と一緒にいるのね」
「そうするのね」
「ええ。吹っ切れたから」
背が高いことを気にしなくなったというのだ。このことを言ってだ。
そしてそのうえでその日の放課後彼と待ち合わせデートをするのだった。小さい二人同士で。
高くて悪いか 完
2012・5・31
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