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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十六話 真実
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グを見た、彼は笑みを浮かべている。
「疑問はもっともです。何故カストロプ公がエーリッヒを殺そうとしたのか、先ずそれを話しましょう」
キスリングの言葉に皆が頷いた。
「理由は恐怖です」
「恐怖?」
オフレッサーが訝しげな声を出した。俺も納得がいかない、ヴァレンシュタインは亡命したとき、兵站統括部の一中尉に過ぎなかった。カストロプ公が何を恐れると言うのだ?
「エーリッヒはリメス男爵の孫なのです」
「!」
「リメス男爵は当初、ヴァレンシュタイン夫妻の死をリメス男爵家の相続争いが原因だと思っていました。しかし真実をヴェストパーレ男爵とルーゲ伯が話しました。その時、リメス男爵は二人にエーリッヒが自分の孫だと話したのです。男爵が亡くなる三日前の事でした」
意外な事実だった。ヴァレンシュタインがリメス男爵の孫? 驚く俺達の耳にキスリングの声が流れる。
「エーリッヒが帝国文官試験に合格し、士官学校を優秀な成績で卒業したとき、ヴェストパーレ男爵は一つの考えを持つようになりました」
「……それは?」
分かるような気がする、しかし俺は敢えてキスリングに問いかけた。
「エーリッヒにリメス男爵家を再興させるという事です。そしてカストロプ公はそれを恐れた」
「冗談は止せ、少佐。ヴァレンシュタインがリメス男爵家を再興したからといってカストロプ公が何を恐れるのだ。無力な一男爵にしか過ぎんだろう」
リューネブルクが呆れた様な声を出した。だがキスリングはそんなリューネブルクに冷笑を浴びせた。
「確かに再興した時点ではそうでしょう。しかし十年後はどうです?」
「十年後?」
リューネブルクが訝しげな声を出した。
「ええ、なんなら二十年後でもいい。リメス男爵は無力な存在だと思いますか」
「……」
リューネブルクが押し黙った。キスリングは視線を俺に、そしてオフレッサーに向けた。誰も口を挟まない……。
「ヴェストパーレ男爵はリメス男爵に対する贖罪からエーリッヒにリメス男爵家を再興させようとしたわけではありません。男爵は政府中枢部にはそれなりに識見を持った人間が必要だと考えていたのです。カストロプ公のように私腹を肥やすことしか能のない人物など排除すべきだと」
「……」
当たり前のことではある、だがその当たり前の事が帝国では実現できていない。
「帝国文官試験に合格し、士官学校を優秀な成績で卒業したエーリッヒはヴェストパーレ男爵の目には最適な人物に映った……。足りないのは爵位だけです、幸い彼はリメス男爵の血を引いている。男爵は密かにリメス男爵家の再興を画策し始めた……」
「……」
「ルーゲ伯は男爵を止めました。本人の意思も確認せずにするべきではないと。しかし男爵は聞かなかった。十年後、二十年後の帝国にはエーリッヒのよ
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