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雲は遠くて
124章 中島みゆきの『恋文』をカヴァーする信也
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きて、何が歓びや楽しみかっていえば、
行き着くところは、そういう、なんていうのかな、自己発見のような、
なにか新鮮な、新しい気持ちになれたらいいなっていうか、
新しい自分に出会えたらいいなっていうか、
そんな小さな希望とかの、日々のささやかな実現のようなことだと、わたしも思う」

「そうそう、日々新たに!だわね。由紀ちゃん。
この谷川俊太郎さんの解説には、ほかにも、おもしろいこと書いてあるんだ。
『何年か前に中島みゆきに会った時、私の書いた
≪うそとほんと≫という短詩がいいと言ってくれたことがある。
≪うそはほんとによく似ている/ほんとはうそによく似ている/うそとほんとは/
双生児 うそはほんととよくまざる/ほんとはうそとよくまぜる/
うそとほんとは/化合物 うその中にうそを探すな/
ほんとの中にうそを探せ/ほんとの中にほんとを探すな/うその中にほんとを探せ≫
という詩である。のちにある対談の中で彼女は《あそこまで言われちゃうと、私、
ナンにもやることないんだけどさ》と言って、
それは私の書いてくれたものをほめてくれるというよりは、彼女自身の書きかた、
歌いかた、ひいては人間観を語っているようで興味深かった。』
って谷川さんは、この本に書いてるのよ。
この話も、時間を超えて普遍的で、いつの世にも通用するような、芸術論だと思うわ」

「ニーチェの言葉に、有名な≪真実なんてない、ただ解釈があるだけだ≫があるくらいよね、
うそもほんとも、真実も虚偽(きょ ぎ)も、ひとの都合(つごう)や好みで決まったりするものね。
ニーチェとかが説く、芸術論のように、芸術的なことを愛好して、たくましく、
楽しく生きたほうがいいんだって、わたしも思うわよ。
ニーチェの芸術論と、谷川俊太郎さんや中島みゆきさんの考え方は、
とても近いという気がするわ。
芸術を大切にして生きていこうとしていると、
自然とその考え方も似てくるんでしょうけど。ね、心菜ちゃん」

「しんちゃんが、ニーチェに共感するのは、ニーチェが、哲学を芸術ととらえて、
熱く、文学的に自らの思想を表現したからですもんね。
やっぱり、わたしたちも芸術を大切にして、人生を楽しくしてゆくしかないのかもね!由紀ちゃん」

「そうよね、芸術を楽しんで、そこから学んでいくしかないのかも、心菜ちゃん。
だって、いまの世の中も社会も、どこまでが夢なのか、どこまでが現実なのか、
なにが真実なのか、正しいのかが、はっきりしないような、(さだ)まらないような、
幻のような、幻想のような、錯覚のような、幻覚のような、
そんな、なんていうの、(むずか)しい言葉でいえば、イリュージョン(illusion)かしら。
イリュージョンで成り立っているような世の中だって気がしてくる
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