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雲は遠くて
124章 中島みゆきの『恋文』をカヴァーする信也
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な、ひとつの形にこだわらない、
全方位的なところが魅力なのかも。由紀ちゃん」

 青木心菜は、川口信也をモデル(主人公)にした連載マンガの、
『クラッシュビート』の絶好調もあって、
人気マンガ家だ。親友の水沢由紀も、心菜の腱鞘炎がきっかけで、
マンガ制作のアシスタントや心菜のマネージャーをしている。

 心菜は、1992年3月1日生まれの25歳。
由紀は、1991年11月8日生まれの25歳。ふたりは、小、中、高校が同じ、幼なじみだ。

 心菜の家は、京王線の下高井道(しもたかいどう)駅の近く。
由紀の家は、その下高井道駅の隣の桜上水(さくらじょうすい)駅の近くにある。

「しんちゃんって、中1のときに、2002年暮れの紅白歌合戦を見ていたら、
中島みゆきさんが初出場で『地上の星』を歌っていて、それがかっこよくて、
それから熱烈なファンになったのよね。
みゆきさんが出たあの紅白歌合戦のときは、わたしも心菜ちゃんも、かわいい小学5年生だったわ!」

 そう言って由紀は心菜に微笑む。ふたりは車窓の外を流れる景色を(なが)めている。

「あの紅白で、みゆきさんが、黒部ダムの地下トンネルの中で、『地上の星』を熱唱していたのって、
つい先日のように思えてくるよね。それだけ強烈な印象もあるのよね。由紀ちゃん。
あの紅白の翌年(よくとし)から、しんちゃんは、みゆきさんの歌なら、
なんでもを聴くようになったんだって。
2003年の新年からは、ニッポン放送で、
『中島みゆき ほのぼのしちゃうのね』というラジオ番組が始まったんだけど、
でも、その放送時間が、月曜日から金曜日までの平日の午前10時30分から、
10時40分だったんだって。それだから、中1のしんちゃんは聴くことができないのね。
それで、しんちゃん、ニッポン放送気付けにして、みゆきさん()てに、
詩のような短編小説に、手紙をつけて送ったんだって。
その小説、小学校のとき、好きになった文学好きな女の子へ捧げるために、
パソコンを使って書いたんだって。
それを、プリンターを使って、ホチキスで止めただけの簡易な自家出版の本だって、
しんちゃん、言うってたけど。
でもすごいわよね、しんちゃんって。やっぱり、早熟なのかしら!あっははは」

「そうだったんだ。しんちゃんって、文学少年だったのかあ!うふふ。
その、みゆきさん宛てに送ったという短編小説はなんというタイトルなの?心菜(ここな)ちゃん」

「タイトルは、『雲は遠くて』って言ったわ。わたしも読みたい!って言ったら、
これはいまのところおれの極秘事項にしてあるからって、(ことわ)られちゃったわ。
連載マンガの『クラッシュビート』に、このエピソードを使っていいかしらって、きいたら、

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