第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
最後の物語:幸せは夢の彼方に
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、PTはあるモンスターと遭遇した。
第一層に広く生息するコボルド系のモンスター。しかし、その体躯は大柄で、明らかに通常湧出のものとは一線を画す個体だと誰もが直感したのである。
そのモンスターを巡って、当然のことながら意見が分かれた。アイテムの消耗もあり、今回は見逃そうとする撤退派。もう一方は、もちろんの事ながらリソースを得ようとする討伐派。しかし、その意見を唱える者の比率は圧倒的に討伐派に傾いており、そのままPTの方針として戦闘が開始された。
――――しかし、その戦闘は驚くほどに短時間で終えてしまった。
戦闘開始直後、その巨体からは想像もつかない速度で槍使いの青年が斧の餌食になった。ほんの一撃、しかし肩口から脇腹、腰に掛けての広範囲をごっそりと胴体から削ぎ落した粗い斬撃は、彼に最期の言葉を残す間もなく青い欠片に還してしまった。
そして、次の瞬間には仲間の死に呆気にとられていた壁役の男性が頭を捕らえ持ち上げられた。手足をばたつかせ、絶叫しながらの足掻きも空しく頭蓋が店売りのヘルムと共に握り潰され、地面に落ちた身体は踏みにじられて爆散した。
残されたリーダー格のプレイヤーは、迫り来る巨体を前に冷静さを失ってしまっていたらしく、傍にいたピニオラをバリケード代わりに突き飛ばすと、彼は一人だけ、一目散に遁走した。その後ろ姿が太い腕に振り払われて弾き飛ばされた。結果として、それがピニオラと彼の命運を分ける運びとなった。
巨大コボルドはピニオラを弾き飛ばすものの、大声を挙げて遁走するリーダーにヘイトを向けたのだ。木の幹に打ち付けられて蹲る横を走り抜け、逃げ出した彼は胴を両断された。それでもまだ死にきれなかった彼は最期、あろうことかピニオラに助けを求めながら叫んで、それを末期の言葉に斧を受けて絶命したのを覚えている。
そんな彼の最期を後目に、ピニオラは先の戦闘でのレベルアップ時に得たスキルスロットに《隠蔽》スキルを捩じ込み、茂みに隠れてコボルドを遣り過ごす。やがて、巨体が遠くへと消えていくのを確認すると、腹の中に溜まったものを思うさま吐き出した。
それは、哄笑だった。とめどなく洪水のように込み上げる嗤いが、彼女の身を捩れさせた。
現実を忘れて他人に期待してしまった自らの滑稽さ、死を恐れてガチガチと身を震えさせる自らの矮小さ。そのどれもが情けなくて、惨めで、下らなくて、過ぎゆく時間を忘れるくらい笑った。
そんな、醜く悍ましい心を土壌に、ピニオラはある狂気を芽生えさせた。
――――面白かった。もっと、このシリーズを見てみたい、描いてみたい、と。
そんなもの、呪いに他ならない。
しかし、当人には自覚の仕様も
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