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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 魔女のオペレッタ  2024/08 
最後の物語:幸せは夢の彼方に
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な同心円状の花壇、白いベンチ。日が昇っていれば、きっと軽めのレジャー感覚でみことを遊ばせてあげられたかもしれない。その時は自分の手料理でもと思い至ったところで思考を停止させ、後悔する。自分の手料理のイメージが原油カレーで固定されてしまった不甲斐無さもそうだが、後ろ向きな思考の染みついた料理スキル方面については我が身の事ながらピニオラでさえ失笑を禁じ得ない。


「あ、黒鉄宮。覚えてますかぁ? わたしとみことさんが出逢ったのは、あそこに行く途中だったんですよぉ? ………まぁ、今思い返してもあの時のわたしは悪趣味でしたけど、というか最近の話なんですけどねぇ〜? ………あぅぅぅ、自分で自分が嫌いになりそうでした。いやもう十分軽蔑してますけどもぉ………」


 誰に言い繕っているのかもよく分からなくなったピニオラは、やや顔を赤くしつつ溜息を吐く。
 とことん自分に自信を失くす日だと認識して口を噤み、今度は南東の方角に伸びる大通りへ向き直ると、自身に《隠蔽》スキル系のModを使用するとそっとみことの頭を撫でて歩き出す。
 通りの両端には、露店の幌屋根と退屈そうに頬杖をついたり欠伸を漏らす商人NPCの群れ。彼等は夜間から早朝はやる気のない省電力モードとなるが、一人でもプレイヤーが通ろうものなら鬨の声を挙げて客引きに火が付く。しかし、視覚に探知されなければ喚かれることも無いのである。みことの睡眠を不用意に覚まさないようにとの心掛けであった。


「………そういえば、わたしはみことさんに自分のことを話した記憶がないんですよねぇ。あまり面白いお話ではないですしぃ、退屈……というか、怖いお話? ホラーというより、ヒューマンサスペンス? ………………いいえ、こういうのはふざけちゃダメですね。聞いてて気持ちの良いものではないですし、これを話すのは、誰かに話さないと耐えられない、わたしの我儘です。ほんの独り言です………だから、どうかそのまま、眠ったままでいてください………」


 その言葉を皮切りに、ピニオラは幼い少女に懺悔する。


「わたしは、少し前までおかしな女の子でした。両親はいつも大きな声で怒鳴り合って喧嘩して、周りの同い年の子もどこか好きになれなくて、気付いたらわたし以外の他人が同じ人だと思えなくて、まるで自分だけ動物園のお猿さんの檻に入れられてしまったような、そんな風にしか感じられなかったんです。変わってますよね。誰も彼もが頭の悪いようにしか見えない、そんな人達と一緒にいるのは御免だ。そう思い続けているうちに、わたしは本当に独りになってしまいました」


 それは、ピニオラの過去。誰かと関わるという事に消極的になってしまった少女の記憶。
 これまでの人生が育んだ価値観。その消極性を肯定する認識が構築されるまでの工程。
 記憶を
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