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真田十勇士
巻ノ八十八 村上武吉その十二

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「何もわかっておられず見てもおられぬ」
「しかもですな」
「気位が異様に高い」
「頂上におられて」
「その有様じゃ、頭がそうした方ではな」
「到底ですな」
「どうにもならぬ、わしから見てももう天下は決まった」
 既にというのだ、このことは。
「徳川家のものじゃ」
「そうなりますな」
「それは急に固まりつつある」
「将軍になられ幕府も開かれ」
「江戸も急に城と町が出来ておるそうじゃ」
「はい、それはです」
 江戸についてはだ、幸村はすぐにだった。村上に答えた。
「それがしも実は」
「行かれたか」
「はい、そうしてです」
「その目で御覧になられたか」
「そうしてきましたが」
「やはり急にか」
「人が集まり」
 そしてというのだ。
「城が出来てきて町もです」
「城の周りに出来てきておるか」
「相当に大きな町にです」
「なるか」
「はい、まさしく」 
 そうだというのだ。
「江戸は」
「やはりこれからは江戸か」
「そして右府殿は」
「大坂もじゃな」
「求めておられます」
 今豊臣家が治めているその町もというのだ。
「しかし大坂だけで」
「あくまでか」
「豊臣家までは、ですが」
「それがわかればな」
「豊臣家は残りますが」
「逆にその程度がわからぬ様では」
「戦になろうとも」
 幸村は述べた、三人で手で刺身を食べつつ話をした。
「どうにもなりませぬな」
「何もわからぬのでは戦にならぬ」
「全く以て」
「茶々殿ではどうにもならぬわ」
「その通りかと」
「しかしじゃな」
「はい、それがしは約束しましたので」
 秀次とのことをだ、幸村は思い出しつつ述べた。
「ですから」
「そうされるか」
「その様に考えておりまする」
「貴殿ならば大名に返り咲けるが」
「ははは、それがしはそうしたことは」
「求めておらぬからか」
「よいです」
 こう言うのだった、村上にも。
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