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二人の騎空士
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ったであろう加護も破片に当たるたびに弱まり、穴が空き、そしてその場所へ新たな破片が降り注ぐたびにグランの肉は弾けていく。敵味方関係なしに、制止の声を上げたくなる。
 グランは足を緩めない。……分かっているのだろう。これが勝機と。彼の体力は既に殆ど無い。そして今の次元断。いつ倒れてもおかしくはないだろう。対して私は時間はかかるが腕の治癒も行える。グランの魔力が尽きれば距離を取りながらルミノックスをもう一度放つことさえできる。
 右手で剣を構え、私も駆け出す。グランのなけなしの体力で放つ太刀を剣で往なす。グランはそれだけでもう握力も維持できないのか、野太刀を手放した。私も片手だけで満足には受け流しきれず、剣を離してしまう。私は間髪入れず、もう一歩踏み込むと右手でグランの顔面へ拳を叩き込んだ。
 倒れ込むグランに馬乗りになり、背中に携えていた短剣を引き抜き振りかぶる。さあ、振り下ろそう。
 グランが此方を見る。
 振り下ろそう。これで、悪夢に悩まされることはなくなる。
 グランがただ、私を見ている。
 振り下ろそう。これで、私は彼と決別し、一人で団を率いていくんだ。
 グランが、口を開いた。
「振り下ろせ。何を迷っている。殺せ!」
 私は、グランを見つめた。
 振り下ろせない。二人で、騎空士になるんだから。
 涙が溢れる。手が震える。簡単な理屈だ。私は、ジータは、グランを殺せない。
「一年前と同じだろう!」
「違う……やっと気づいた。私がグランに殺される夢を見る理由が。私はずっと、グランが生きていると信じていたんだ」
 だから、他の団員が彼の立場になった夢を見た時、一年前と違う気持ちになったんだ。
 一陣の風が、私達を撫でる。終わったのだ。終わった。
「だとしても。お前は、俺がいない団を率いなければならない」
 グランは私の目を見て言い放つ。何でそんなことを言うのだろうと呆気にとられた私の下で、グランは右手を伸ばす。その先には、ククルの拳銃。私が捨てたのとは別の方!
 止めようとした右手をグランは左腕で押しとどめる。左腕を動かそうとして激痛を私が襲った。そして何もできないまま、グランは銃口を彼自身のこめかみに当てる。
「何で」
 グランの引き金にかけた指に力が篭もる。
 無表情を装ってはいるが私は分かる。彼は、グランは、笑っていた。
 一発の銃声が辺りを包む。グランの血が跳ね私の顔を濡らした。

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