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SAO−銀ノ月−
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クリと止まったものの、やはり言い出し辛いのか口が動くことはなく。

「……SAOの記憶、覚えてるか?」

「ッ!?」

 悪いがこちらから痺れを切らして、拳に力を込めながら問いかける。出来れば当たって欲しくないように、という祈りを込めて放った質問だったが、レインの反応を見るにどうやら届かないようだった。

「何で……まさか、誰か、私以外にも……!?」

「……リズだ」

 SAOの記憶がないことを言い当てられたレインは、混乱しながらも核心を突いていて、今度はこちらが目を背ける番だった。その事実を認める度に無力感が身体を支配していき、無意識にレインの家の壁に拳を叩きつけていた。

「あ……悪い」

「ううん……ね、リズっちが思い出せないのは、SAOの記憶だけなんだよね?」

「あ、ああ。そう聞いてるが……リズ、は?」

 怒りに任せた一撃を謝りながら、ばつが悪そうに髪を掻くと、レインから妙な問いかけが放たれていた。まるでその言い方は、レインは他にも思い出せないことがあるような――こちらの無言の問いかけに、レインは頷くことで応答した。

「私は、つい最近のことも思い出せないの。ユナと一緒に踊ってて、何かに気づいて……それから」

「それは……」

 レインはユナのバックダンサーとしてアイドル活動をしている最中、何かに気づいて俺とリズにメールを打った。そこで何らかの手段によってか記憶を失ってしまい、今まで混乱で連絡を取れる状態ですらなかった、ということ。レインからメールが打たれた時点で、早く駆けつけていれば――と思わざるを得ないが、それは内心に留めておく……レインの前で言うことではない。

「だけどそれは、逆を言えば……私は、仕事中に何かを知ったってことになる」

「レイン……?」

 確かにレインの言った通りに、今回の事件の黒幕が記憶を失わせることが出来るのならば。リズはSAOのことのみを忘れているのに対して、レインはそれ以上のことを思い出せないでいる。それは逆を言えば、レインはリズ以上に忘れさせられる程に、何かを知りすぎてしまったということだ。

「用件はこれ。ショウキくんに、読んで欲しいの」

「これ……日記帳?か」

「うん。バックダンサーの仕事が決まった時から、嬉しくて書き始めたの」

 普段はそんなことしないんだよ、とレインが苦笑しながら差し出してきたのは、ピンク色にデフォルメされたレインの笑顔が表紙の、どこにでも売っていそうな日記帳。困惑しながらもそれを受け取った俺に、レインは寂しそうに理由を語りだす。

「私、怖いのはSAOを忘れたことじゃなくてね。何か……何か、大事なことを知ったのに、それが思い出せないのが怖くて、苦しいの。私が思い出せれば、それで終わるのに……で
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