第三話 新たな天使
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眺めることにした。
手伝う、という選択肢もあるけど俺の料理の腕は絶望的で手伝ったら何が起きるか分からないほとで、以前あったことをあげるなら……そうだなぁ。
包丁を持ったら、包丁の刃が折れて飛んでいくとか。鍋を持ったら鍋の底に大きな穴が開くとか。他にもあるけど、料理をする上で必要な器具を持つと何故か壊れてしまうのだ。
ある意味、天性の才能って言われたけど全然嬉しくなかった。
だから、俺はこうやって料理をしている母さんを眺めることしか出来ない。手伝いたくても、手伝ったら母さんに怪我させるかも知れないし……。だから、俺は見るだけだ。
「……」
ふと、思った。
────クーデリア、迎えに行こうかな。
多分。クーデリアは一度、自分の職場に行ってから家に帰ってくるだろう。それなら俺もクーデリアの職場に行って一緒に帰ろう。
「母さん、俺。クーデリアを迎えに行ってくるよ」
「うん、解った。気を付けてねぇー」
クーデリアが働いてる場所……久しぶりに行くなぁ。
昔はしょっちゅう母さんに連れられて行ってたけど、一人で行こうとはあまり思わないし……それに、こんな大きな建物は苦手だ。
ここ数年で大きく発達した街並み。
小さい頃はどうとも思わなかったけど、これだけ劇的な成長を見せられたら頷ける。人の数も増え、様々な人種の人々が歩いていた。
最近は地球の金持ちの旅行者も多く、火星では見慣れない服や食べ物が沢山出回っていた。
目の前の売店でも、地球の売り物が並べられ販売されている。
その値段は、子供のお小遣い程度では買えない高さで。
「ねぇねぇ、おじさん!
これ安くしてよ!」
「おいおい、ボウズー。これでも結構安くしてんだぜ?
これより安くはできねぇよ」
「あと少し!ほんの少し!
そうしたら買えるから!」
「ほーん。なら、母ちゃんにでも小遣いせびってくりゃあ買えるなー」
「ほんの少しでいいから安くしてよぉ」
「けっ。これ以上、安くなんてできねぇつうの。商売の邪魔だから帰れ帰れー」
こんな有様で。
火星に出回っている地球の物は子供のお小遣いでは買えない高級品となっている。
ちなみに、さっきのやり取りで子供が買おうとしていたのはインスタントラーメンと呼ばれるもので、なんでもお湯をかけるだけで食べられるらしい。
味も、そこそこ美味しいらしく。
一度は食べてみたい。
でも、すぐに作れる反面。体には悪いらしい。
母さん曰く、料理は手間を掛ければ掛けるほど美味しくなる! インスタント食品は邪道!と言っていた。
早くて美味い。でも、体に悪い。
作るのに時間が掛かって美味い。
まぁ、俺は母さんの料理の方が美味しいと思うけどね。
生まれてから一度も
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