第四章
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けれど長い黒髪を後ろであげてまとめて見事なうなじを見せている。
胸は大きく腰はくびれている。まるでモデルの様なスタイルだった。
白く卵形の顔に切れ長の奥二重の目、高く整った形の鼻、紅の小さな唇。そうしたものを見て。
私はこの声をかけてきた相手が女だとわかった。その女がだ。
妖しい微笑みでだ。私に言ってきた。
「随分詰まらなさそうに飲んでるわね」
「わかるのかしら」
「ええ、わかるわ」
美女はその妖しい微笑みで私に言ってくる。
「見ればね」
「面白くないのよ」
私は微笑んで美女に言った。
「最近ね」
「面白くない。この街じゃないわね」
「ええ、人がね」
街にいる人間達がそうだと。私は美女にも告げた。
そしてその私に。美女はこう言ってきた。
「それならね」
「一緒に飲むのかしら」
「充分飲んだ様に見えるけれど」
美女は私の場所に置かれているその空のコップを見ていた。
そしてそのうえでだ。私にこう言ってきた。
「それでもまだ飲みたいのかしら」
「そう言われるとね」
「お酒はもう充分よね」
「この気持ちが紛らわせるのならね」
「ニヒリズムね」
今の私を見抜いて。美女はこの言葉を出してきた。
「それじゃあね」
「それは男に使う言葉じゃないかしら」
「ニヒリズムは誰にもあるものよ」
「女でも?」
「そう、男でも女でもね」
性は関係ないと。私に言ってきた。
「だからね」
「ニヒリズムがあるからこそ」
「そう。それをどうにかしたいのよね」
「どうにかできたらね」
したいと。私も美女に応えた。
そしてだ。私から言った。
「貴女はそれをどうにかできるのかしら」
「できるからこうして声をかけてきたのよ」
「随分と自信家ね。それじゃあね」
「二人で行きましょう」
美女は手を差し伸べたりはしなかった。だがそれでも。
私に妖しい誘いをかけてきて。そうしての言葉だった。
「そのニヒリズムをなくせる場所にね」
「ええ。それじゃあ」
こうしてだった。私は美女と共にだ。夜の街に消えた。そうしてだった。
朝にベッドの中でだ。こう美女、私の傍らで寝ている彼女に言った。
「正直に言うわね」
「ええ、はじめてだったのね」
「女はね」
それでもいいと思いながらも。本当にはじめてだった。
それでだ。私は美女に言った。
「新鮮だったわ。それにね」
「どうだったかしら」
「ニヒリズムね」
美女の言ったこのことについて。私は答えた。
部屋の中は朝日が差し込めてきて白くなってきている。これまでの薄暗いものは消えて。
その中でだ。
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