戦友は今・・・
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ど前の試合でピッチャー返しを頭部に受けてしまい、その当時入院していたらしい。それから数週間で退院したのだが、中学に上がったそのあとも体調が崩れることが多々あり、その原因を調べるために再度入院しているらしい。
「せっかくお姉ちゃんが入ってたシニアに入れたのに・・・練習にも行けなくて・・・」
悲しそうな少女の姿を見て、思わず今の自分と重ね合わせてしまう。大好きなものをできない悔しさは彼も、彼女も同じだった。
「でも!!天王寺さんに会えてよかったです!!亜理沙の目標の人だから!!」
「俺、キャッチャーなんだけど」
ポジションが違うのに目標にされるのは、妙な気分になってしまう。喜んでいいのか、はたまた別の反応をすればいいのか。
「目標です!!いつか亜理沙のボールを、天王寺さんに受け止めてほしいんです!!」
「そういうことか」
自分とバッテリーを組んでほしいから、そういう意味での目標とされていることを知り、嬉しくなる。こんな年下の子にまでそう思ってもらえることは、人ならば誰でも喜ぶであろう。
「絢瀬さん!!ここにいたのね」
喜びに浸っていると、扉を開き一人の看護婦が入ってくる。彼女はどうやら目の前の少女を探しに来たらしく、目的の人物を発見できて安堵しているようだった。
「検査の時間だから、戻りましょ」
「は〜い」
手を引かれ、病室へと帰っていく少女。しかし、彼女は言い残したことがあったのか、立ち止まると青年の方を振り向く。
「天王寺さんもケガ!!早く治してくださいね!!絶対に亜理沙のボール受けてくださいね!!」
「あぁ」
特に約束をしたわけではなかったのに、いつの間にか決まってしまっていた取り決め。拒否権などなく返事をするしかなかった青年に笑顔を見せた後、少女は屋上を後にした。
「行っちゃったな」
台風のように現れて、去っていった少女。取り残された青年は沈んでいた自分がバカらしくなり、苦笑いを浮かべる。
「リハビリ頑張るか」
果たされることがあるとは思えないが、結果的に元気付けられた少女との約束を胸に病室へと帰っていく天王寺。その翌日も退院の挨拶へとやって来た少女に圧倒された彼は、その出会いをきっかけに今までとは別の道を歩むことになるとは、まだ知らなかった。
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