暁 〜小説投稿サイト〜
DOREAM BASEBALL 〜ラブライブ〜
戦友は今・・・
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俺の下した結論に耳を疑う青年の顔。彼にその後幾度となく説得されたが、俺は答えを変えることはなかった。

『悪いけど、今プロになるわけにはいかない』

最後の夏の大会を終えた俺は、ある理由からプロ野球の道へ進むのを拒んでいた。四年間の猶予をもらい、また決心がついた時、迎え入れてくれるチームがあればプロに進もう。そう思っていた・・・しかし・・・

『この足では、野球はもう無理だ』

すぐに治るだろうと思っていた。クロスプレーなんか今まで何回も何回も経験していたし、接触してケガしたこともある。それなのに、今回のケガは、今までのものとは比べ物にならない大きなものだったらしい。

『この足じゃ全力疾走なんかとてもできません。痛みに耐えられないと思いますよ』

来年には最高学年となり、主将を任されることがほぼ決まっていた。それだけにチームに与えた影響は大きかったし、彼自身もいまだに切り替えができずいた。

『お前が来る頃には、手の届かないところにいるかもよ?』
『上等だよ。すぐに追い抜かしてやるからな』

「本当に手の届かないところに行かれたな」

どんどん階段を駆け昇っていく背中に、顔を背け降りていったかのような、そんな感覚に襲われる。二度と果たすことのできない約束が、ひどく胸を締め付けた。

「くそっ!!」

立ち上がり、フェンスを掴み声を上げる。かつて下した判断に対する後悔と、自分の無力さに対する苛立ちが、それには込められていた。

「あいつもこんな気持ちだったのかな・・・」

脳裏を過る高校時代の一人の友の姿。あの時の彼も、こんな絶望のそこにいたのかと思うと、ますます心が荒んでくる。

(これからどうするかな・・・)

大切な物を失い、人生の全てを捧げてきただけにショックは計り知れない。激しい喪失感の中、これからのことをシミュレートしてみる。

(教員免許は取れそうだし、教師にでもなるか?)

勉強も程よくやっていたおかげで、安定した職業に就くこともできる。しかし、果たしてそれが最善なのか、わからずにいた。

(やりたいことってわけでもないし・・・)

元々プロ野球に進んでいく予定だっただけに、その計画が崩れたことで気持ちが下を向いている。今は何を考えようとも、ネガティブ思考にしかなり得ないのに、彼はそれに気付かず、答えを見つけようともがく。

「ふぅ・・・」

しかし、出てくるのはため息ばかり。簡単に答えなど、出るはずもなかった。

(もういっそのこと・・・ここから・・・)

フェンス越しに地上を見下ろし、あらぬ考えが頭を過る。それは本来の彼なら選ぶはずのない選択であったはすだったが、冷静さを失っている今の状態では、正しい判断をすることができなかった。

ガシャッ
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