プロローグ
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カンッ
バットから小気味のいい音が響き渡る。目の前でそれを振り抜かれた背番号27は、マスクを脱ぎ捨て打球の行方を見送る。
(レフトフライか)
高々と打ち上げられた打球は、ほぼ定位置で空を見上げている左翼手に向かって伸びているのがわかる。現在のアウトカウントは一つ。ランナーは二塁と三塁におり、タッチアップされることが容易に想像できた。
(三塁ランナーの足は速くない。あいつならあの位置からでも十分させるはずだ)
七回の裏、得点は2対2の同点。この場面での一点は、後々大きく響いてくることから、絶対に死守したいところだ。
パシッ
ボールの後方から助走を付けて捕球したレフト。その瞬間三塁ランナーがホーム目掛けて全速力で走り出す。
「バックホーム!!一本で来い!!」
スタートもよく、ギリギリのタイミングではあったが、それしか選択肢はなかった。
指示を受けたレフトは一歩のステップでボールを放つ。先程のフライで2アウトとなっていたこともあり、その軌道は高く、キャッチャーに直接投げ込まれた。
(!!マジか!?)
しかし、その軌道を見た青年は思わず目を見開いた。なぜなら、送球がわずかながらに逸れてしまっていたからだ。
「くっ!!」
ホームから一歩体を動かし、腕を伸ばしてボールを捕球する。それからランナーを見やる。
「「!!」」
その際二人とも目が合ったのと同時に、すぐに危険を察知した。
キャッチャーがボールを捕ったその場所は、ランナーの走路に重なってしまっていたからだ。
ザザザッ
タイミングがギリギリだったこともあり、三塁ランナーはすでに滑り込もうとしていたところだった。ボールを持ったキャッチャーもタッチしようと試みるが・・・
ガンッ
それより早く走者の突き出した足が、捕手の片足を蹴り抜いてしまった。
「うおっ」
蹴られたことによりバランスを崩す27番。彼は滑り去る走者が通過した地面に激突した。
「セーフ!!セーフ!!」
倒れた青年の後ろから聞こえてくる無慈悲な判定。それを聞いた青年は立ち上がろうとしたが、足が思ったように動かない。
「三つ!!」
仲間からの声を聞き、倒れたままボールを転がすように投じる。地面を転がるその白球は、すでに二塁ランナーが到達したサードベースに、遅れて到着する。
「くそっ」
考えられる最悪の結果になってしまった状況に拳を叩きつけそうになったが、冷静になろうとぐっと堪える。
一度深呼吸を行った後、再度立ち上がろうとするキャッチャー。しかし、今度はその足にハッキリと激痛が走り、全く動くことができない。
「剛!!」
「タイムお願いします!!」
「ターイム!!」
プレイを一度止め
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