第69話<美保の旭日>
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
呉オジサンが言う。
「エエですなぁ、この鎮守府にも少しずつ新しいメンバーが増えていくンやな」
「そうですね」
私が応えると神戸が聞いてきた。
「あの子も新顔ですか?」
「え?」
思わず振り向くと木曾に連れられて「まるゆ」も上がってきた。
大淀さんが二人を私に紹介する。
「司令、正式にご紹介申し上げていなかったと思います。こちらが陸軍の、まるゆです」
私は彼女の視線に合わせて身をかがめると、半分泣いて疲れた表情の、まるゆに声をかけた。
「ご苦労さんだったね」
「はい」
可哀相な彼女は蚊の鳴くような声で応えた。
上体を起こした私は大淀さんに言った。
「取り敢えず、まるゆについては、しばらく木曾に面倒を見てもらおう」
「了解しました……では木曾さん、お願いします」
大淀さんに指示された木曾は無言でサッと敬礼をした後、まるゆに声をかける。
「じゃ行こうか」
「はい」
何となく、この二人は良いコンビになりそうだなと思えた。
鳳翔さんが来た。
「あの……お時間は早いですが、朝食の準備は如何致しましょうか」
「そうだな……」
私は参謀たちを振り返った。
「せっかくだから皆さん、一緒に朝食にしましょうか?」
呉オジサンが苦笑しながら言う。
「まぁ、贅沢は言えませんが、ひと風呂浴びたい気持ちですわ」
「あ、同感です」
神戸も苦笑する。
舞鶴が言う。
「確か、この近くに温泉があるだろう?」
「あ、そうだな……」
私はチラッと時計を見た
「20分くらいで身支度を整えてから朝食にして……それから皆生温泉へ。ここから車で直ぐの所に良い場所があるので朝食後に、ご案内しましょう。午前中は時間もありますから」
参謀たちから『おおっ』という歓声が上がる。
私は再び鳳翔さんを見て言った。
「では悪いが、06:30から朝食にするから準備を頼む」
「かしこまりました」
彼女は一礼をして、本館へと戻っていく。
「では皆さん、後ほど」
私たちは、お互いに敬礼をして解散した。
歩きながら私も考えた。今日の午後には参謀たちを送り出してから私自身も、いろいろ整理だ。今回の戦闘に関する報告書も作らないと……。
「ん?」
いつの間にか走り寄って来た寛代が私の袖を引く。
無言で指差した彼女の視線の先には、大山の稜線から昇る朝日が見えた。それに合わせて鎮守府の建物も橙色に染まっていく。美保の朝は、とても心地よかった。白くなった月も笑っているようだ。
「ああ、良い夜明けだな」
わざわざコレを見せるために? ……不思議な子だな。
その時、私は何となく気付いて彼女に言った。
「お前も朝食、一緒に食べる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ