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真田十勇士
巻ノ八十八 村上武吉その四

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 主従はすぐにだった、萩に向かった。萩藩の中心であるその町に入るとだ。海野は萩城の天守閣を見て言った。
「どうもです」
「小さいか」
「はい、三十七万石の城にしては」
 こう幸村に話した。
「どうにも」
「あれはじゃ」
 何故萩城が小さいのかをだ、幸村は海野に話した。
「幕府がそうせよと言ったらしい」
「幕府がですか」
「そうじゃ、この萩の場所もじゃ」
 それもというのだ。
「城を置いてな」
「小さな城にせよとも」
「言われたのじゃ」
「そうだったのですか」
「また言うが毛利家は厄介者じゃ」
 幕府にとってというのだ。
「だからな」
「出来る限り弱める為に」
「城を小さくしてじゃ」
「しかも萩にですか」
「置かせたのじゃ」
「どうも萩は」
 この場に着いたからこそだ、海野は感じて言うのだった。
「端にあり」
「便が悪いな」
「藩の中心としては」
「しかも土地が悪い」
「見れば」
 海野はここで周りを見た、家々は出来てきているがだ。
「川と川の間にあり」
「洲じゃ」
「やはり中心にはです」
 藩のというのだった、ここでも。
「相応しくないですな」
「だからこそ置かせたのじゃ」
「藩の中心を」
「そうしておるのじゃ」
「そこまで毛利家を警戒してですか」
「注意しておるのじゃ」
 幕府はというのだ。
「そういうことじゃ」
「成程」
「厄介な場所じゃ、しかし」
「それでもですか」
「毛利家も必死じゃ」
「見れば」
 海野はまた周りを見回して言った。
「この場所は」
「難儀な場所でもな」
「人が多く」
「頑張って働いておるな」
「どの者も」
「地の利は大事じゃ、しかしな」
「地の利よりもですな」
「人じゃ」
 こちらの方がというのだ。
「大事じゃ」
「だからですな」
「毛利家は人を大事にすればな」
「それで、ですな」
「栄えるやも知れぬ、いや」
「必ずですか」
「栄える」
 幸村は海野に確かな声で言った。
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