第四章
[8]前話
「何でしたら日本人の方にも行かれて」
「美を語り合ってはというんだね」
「そうされてはどうでしょうか」
「それもいいね、しかし」
「今はですね」
「書こう」
ワイルドは天使に強い声で言った。
「そうしよう」
「はい、ただ神に変な作品を見せないで下さいね」
「私の美をかい」
「神が怒られますので」
「怒ろうとも私の芸術は至上のものだ」
ワイルドは生前、入獄前のそれを出した。
「神ですら認める程のものじゃないか」
「ですが神は耽美はお嫌いなので」
「そちらの作品はかい」
「神にはお見せしない様に」
「若し見せればだね」
「はい、またですよ」
天使はワイルドに眉を曇らせて話した。
「ああなりますから」
「流石にあれは私も堪えた」
入獄、そして牢獄での生活はというのだ。
「私にとっては地獄だったよ」
「そうなりたくないですね」
「ではだね」
「はい、くれぐれもです」
「ああいう思いは死んでも二度としたくないね」
「もう死んでますし」
天使はワイルドにこのことも突っ込みを入れた。
「ですがそうならない様に」
「わかったよ、ではね」
「はい、書かれて下さい」
神にはそうした作品を見せない様にしてとだ、こう言ってだった。天使はワイルドに生前の様に書いてもらった。そしてワイルドも今は寛容な下界を見つつ書いた。その状況を羨ましく思いながら。
時代が違えば 完
2017・1・23
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