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殺人
第二章

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「鉈とか斧とかね」
「色々あるわね」
「そんなの使ってあんたをバラバラにするとか」
「そこまでする?」
「しないわよ、というか何であんたを殺す理由があるのか」
 またこの話をした。
「それがないから」
「そもそも」
「そう、本当にね」
「訳がわからないのね」
「どうしてそんな夢を見たのか」
「不思議ね、まあそれでもね」
 円は珠莉にあらためて言った。
「夢は夢ってことで」
「現実じゃないから」
「変な夢は忘れることよ」
 それがいいというのだ。
「それで食べた後は」
「会社ね」
「今日も世の中は平常運転よ」
 テレビのニュースでは昨日の芸能界の話題をしている、そして天気予報やら占いやらもしている。円はその中で自分のトーストとゆで卵を食べつつ言った。二人共朝はしっかり食べる主義で順番に軽い朝食を作って食べている。
「私達の会社もね」
「そうね、課長さんもね」
「来たらまた旦那さんが太ったとかお子さんが塾でどうとか肩凝りがとかよ」
「最近更年期障害とかね」
「よく言ってるから」
「今日もね」
「まあそうした平常運転の世の中にね」
 夢からというのだ。
「そっちに行きましょうね」
「そうね、夢は夢」
「そういうことでね、じゃあ食べたら」
「ええ、出勤ね」
「さっさとジャージを脱いで」
 二人共寝巻きのジャージ姿のままだ、女二人の生活だと寝巻きにも気を使うことはなくなる。珠莉は黄色、円は白のジャージだ。
「スーツを着て」
「勿論歯も磨いてお顔も洗って」
「メイクもしてね」
 働く女の朝は忙しい、例え気使い無用の女二人の生活でも。
「そうしてね」
「今日も頑張りましょう」
「お仕事に」
 夢のことは忘れてそちらに考えを向けるという話になった、そして実際にだ。
 珠莉は食事の後は歯を磨き顔を洗ってスーツに着替えてメイクもしてだった。自分と同じことをした円と共に出勤した。 
 そうしてこの日は普通の日常生活を送った、そのうえで。
 珠莉は二週間程特におかしな夢は見なかった、だがその二週間程でだ。
 また夢を見た、今度は自分の両親をだった。
 名古屋の実家において寝ている間に家に火を点けて焼き殺した、それで起きると咄嗟に実家に電話をかけた。
 するとだ、母親が電話に出て娘に眠そうな声で聞いてきた。
「朝から何?」
「いや、お母さん無事なの」
「無事も何も今何時だと思ってるのよ」
「六時よ」
「ちょっと早くない?」
 平日に電話をかけるにしてはというのだ。
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