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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十二話 イゼルローンにて(その2)
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そうな表情で何処かオドオドしながら俺に話しかけてきた。
「大佐、あまり気にしないでください」
「大丈夫です、気にしていませんよ」

リンツが俺の顔を見ている。思わず苦笑が漏れた、俺はどうやら情緒不安定に見えるらしい。リンツが小声で話しかけてきた。
「先程の大佐の親友の方ですが……」
「……」
「あれは刺し傷でした。我々がやったものではありません」
「!」

キスリングは味方に刺された、そういう事か……。思わずリンツの顔を見詰めた。リンツは俺に答えるかのように無言で頷く。
「あの三人の中に犯人が居る可能性もあります」

思わず溜息が出た。敵と戦う……、だがその敵とは誰なのか。一体どれだけの人間が味方と思っていた人間に殺されたのか……。おそらくキスリングを殺そうとしたのはカストロプ公だろう。フェルナーに対する警告だ……。

部屋を出て仮の司令部に向かいながらリンツに話しかけた。
「シェーンコップ大佐は捕虜をどうするか言っていましたか?」
「いえ、何も言っていません。ですが逃げるのに精一杯ですからね、余程の大物でもなければ、多分放置していくことになるでしょう」

キスリングをどうするか……。此処に放置するのは危険だ、あの三人が殺す可能性もある。カストロプの意を受けているかもしれんし、俺に対する反感から殺す可能性もある。

捕虜として同盟に連れて行く? 気が進まんな、収容所生活は決して楽じゃないはずだ。捕虜交換だっていつあるか分からない……。亡命者として扱う……、無理だな、ハイネセンに戻ったら軍法会議だ。今無茶をすればキスリングだけじゃない、グリーンヒルの立場も危うくする。

残る手段は帝国側の信頼できる人物にキスリングを預けるか……。オフレッサー、リューネブルク、ラインハルト……。どいつもこいつも癖は有るだろうが信頼は出来るだろう、少なくとも部下を見殺しにする人間じゃない。問題はどうするかだな……。

死なせることは出来ない……。俺の所為でお前を死なせることは出来ない。キスリング、必ず助けてやる。



宇宙暦 794年 10月20日  イゼルローン要塞 ミハマ・サアヤ


ヴァレンシュタイン大佐がリンツ少佐と共に戻ってきました。大佐の表情は硬いです。そしてリンツ少佐が何処となく大佐を気遣うような表情をしています。
「何かわかりましたか?」

シェーンコップ大佐が問いかけるとヴァレンシュタイン大佐は頷きました。
「敵の指揮官ですが、オフレッサー上級大将、リューネブルク准将、それとミューゼル准将だそうです」

思わず横にいるバグダッシュ中佐と顔を見合わせました。中佐も表情を強張らせています。ラインハルト・フォン・ミューゼル准将……。大佐がヴァンフリートで何が何でも殺そうとした人物です。


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