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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十二話 イゼルローンにて(その2)
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か……。

カストロプ公か……。彼については色々と思うところは有る、しかし何故俺の両親を殺した? 動機が分からん。どうせ何らかの利権が絡んでいるとは思うが……。

「あんた、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン大佐か?」
いつの間にか思考の海に沈んでいたらしい。気が付くと体格の良い男が俺が絡むような口調で問いかけてきていた。

「……そうです」
俺が答えるのと同時だった。そいつが吠えるような声を上げていきなり飛びかかってきた。でかいクマが飛びかかってきたような感じだ。

しゃがみこんでそいつの足に荷電粒子銃の柄を思いっきり叩きつけた。悲鳴を上げて横倒しにそいつが倒れる。馬鹿が! 身体が華奢だから白兵戦技の成績は良くなかったが、嫌いじゃなかった。舐めるんじゃない。お前みたいに向う脛を払われて涙目になった奴は一人や二人じゃないんだ。

立ち上がって荷電粒子銃をそいつに突きつける。他の二名は既にローゼンリッターの見張りが荷電粒子銃を突きつけていた。
「ヴァレンシュタイン大佐! 大丈夫ですか!」
「大丈夫ですよ、リンツ少佐」

「貴様、一体どういうつもりだ! 死にたいのか!」
リンツが体格の良い男、クマ男を怒鳴りつけた。
「う、うるせえー。ヴァンフリートの虐殺者、血塗れのヴァレンシュタイン!俺の義理の兄貴はヴァンフリート4=2でお前に殺された。姉は自殺したぜ、この裏切り者が!」

クマ男の叫び声に部屋の人間が皆凍り付いた。姉が自殺? こいつもシスコンかよ、うんざりだな。思い込みが激しくて感情の制御が出来ないガキはうんざりだ。どうせ義兄が生きている時は目障りだとでも思っていたんだろう。

「ヴァンフリートの虐殺者、血塗れのヴァレンシュタインですか……。痛くも痒くも有りませんね」
俺はわざと声に笑みを含ませてクマ男に話しかけた。周囲の人間がギョッとした表情で俺を見ている。クマ男は蒼白だ。

「き、貴様」
「軍人なんです、人を殺して何ぼの仕事なんです。最高の褒め言葉ですね。ですが私を恨むのは筋違いです。恨むのならヴァンフリート4=2の指揮官を恨みなさい。部下の命を無駄に磨り潰した馬鹿な指揮官を」

その通り、戦場で勝敗を分けるのはどちらが良い手を打ったかじゃない。どちらがミスを多く犯したか、それを利用されたかだ。敵の有能を恨むより味方の無能を恨め。今の俺を見ろ、ウシガエル・ロボスの尻拭いをしている。馬鹿馬鹿しいにもほどが有るだろう。

「裏切り者は事実だろう!」
笑い声が聞こえた、俺だった。馬鹿みたいに笑っている。笑いを収めて蒼白になっているクマ男に答えた。
「私が裏切ったんじゃありません、帝国が私を裏切ったんです。恥じる事など一つも有りません」

呆然としているクマ男を放り出してリンツに近づいた。リンツは心配
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