暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
百十五 それぞれの道
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したのだが、あれ以来、ナルトとは会っていない。

ふと手の甲に落ちてきた雫。物思いに沈んでいたナルは、ハッと空を仰いだ。
日は照っているのに降り落ちる雨を見て、自来也が顔を顰める。
「通り雨かのう。急ぐぞ、ナル」


自来也に急かされ、慌てて金の髪を翻す。黄昏時の狐雨が、ナルの頬を軽く撫でた。

これから先、長く険しい道のりへ進む彼女の心を奮い立たせるように。


















ぴちゃん、と空洞で反響する。
天井から垂れる氷柱石から滴下する雫が深閑とした洞窟内で響き渡った。

一点の光も入れぬ暗闇に溶け込む二つの人影の内、何の前触れもなく片方が口を開く。
「―――どうだ?」

開口一番に問われても、ナルトは狼狽一つしなかった。
「気に留めるほどでもない」


鬼の国が『暁』に依頼してきた要人警護。その事後報告をする為、ペインとの対話の場に訪れたナルトは淡々と答えた。
必ずしも真実ではないが、虚言とまでもいかぬ内容を告げる。
「巫女の予言とは己自身の死の回避。それだけのことだ」


鬼の国の巫女が予言をするというのは有名な話だ。だがその予言がどういった範囲を示すのか、そういった類は謎である。
遥か先を見通すのか、はたまたそう遠くない未来を予知するのか。どういった犯罪が起きるのか、或いは誰が誰に殺されるのか。
そういった事を予言出来るのであれば、その未来を阻止しようと大抵の者は動くだろう。だが、それでは一部の者は非常に困る。
もちろん犯罪を起こす側――加害者の立場である者達だ。

その代表的な例であるが故に、『暁』のリーダーたるペインは、予言が妨げになるようなものならば、その巫女を消せ、とナルトに以前命じたが、実際に巫女の護衛の任についた本人からの返答はあっさりしたものだった。


「未来を見通すわけでも、前以って先を知り得ることもない。単なる杞憂だろう」
「そうか…―――妖魔のほうは?」
「尾獣ではなかった」
ナルトの端的な答えに、ペインは、そうかと一言だけ返した。

ナルトの言葉に何の疑いも抱いていない事が、本人ではない【幻灯身の術】による立体像からも見て取れる。
己がそんな、嘘偽りない報告をするような人間に見えるのだろうか、とナルトは内心自嘲した。

「…ご苦労だった」
聞きたい事柄だけ聞いたペインのその労いの言葉を受けるや否や、ナルトは陽炎に背を向けた。
前回、イタチ裏切りの件にて召集をかけた洞窟。其処の出口へ向かうナルトの背中に、【幻灯身の術】で消える前にペインは呼びかける。

「『暁』のお前の席はいつでも空いているぞ」


そう一言告げて消え去ったペインを尻目に、ナルトは無言で洞穴から外へ出た。
背後
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