百十五 それぞれの道
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
その日の早朝、決意を秘めた眼差しで火影室の扉を叩いた少女が、二人、いた。
それは山中いのと…――――。
同期であり仲間であり親友でもある少女達の決意を知らず、彼女達より一歩先を進んでいる波風ナルは、現在、妙木山で蛙達に見送られていた。
ある程度の仙術を身につけ、自来也たっての希望で、今度は見聞を広める為に修行の旅へ出かける事となったのだ。
フカサクとシマの夫婦蛙を始めとした蛙達に名残惜しくも別れを告げ、ナルと自来也は妙木山を出た。
無言で黙々と山を抜け、ある程度の距離を置いてから、二人はピタリと足を止める。蛙と別れの挨拶をした時は青かった空が、すっかり赤く染まっていた。
「ナル…」
「エロ仙人…」
「やっと…。やっとだのぅ」
「とうとうだってばよ……」
「「これでやっと…」」
顔を見合わせ、深く頷き合う。
「「虫料理から解放される…っっ」」
心の底から同時に言って、自来也とナルはがっしっと手を握った。その眼は心なしか涙ぐんでいた。
二大仙蝦蟇の一人でフカサクの妻のシマは、それこそナル達を気遣ってくれたものの、彼女が振舞う料理は虫や小動物を調理したもの。栄養はあるのかもしれないが、見た目的にもちょっと遠慮したい代物だ。
おかげでこの妙木山での修行中にナルの料理の腕前はメキメキ上がった。魚や山菜が豊富な山なので、秘かに調理していたのである。
食べられる野草に関して、以前いのから教えてもらっていたナルは、心の内で何度も彼女に感謝していた。ちなみに虫料理を彼らが食べたかどうかは、割愛しておく。
「料理って、見た目も大事なんだってばね…」
「思い知らされたのう…」
遠い眼でしみじみと呟いた自来也とナルは、早速近くの街を目指して歩き出す。
修行開始の前に、まずは久方ぶりのまともな食事を求めて、彼らは先を急いだ。
「…一楽のラーメンが恋しいってばよ…」
「修行中も、しょっちゅう言ってたな」
残念だが諦めろ、と自来也に宥められ、ナルは唇を尖らせる。拗ねながらも一楽のラーメンの味を思い出そうとしているうちに、ふと、ある約束事が頭に過ぎった。
うずまきナルトとの約束。
中忍本試験前に【口寄せの術】を会得しようとしていた際、アドバイスしてくれたお礼に一楽のラーメンを奢ると約束した。一緒に食べに行こうと言ったあの約束事は、未だに果たされていない。
(今度は、いつ会えるんだってばよ…)
夕焼け空の下、ナルは自分の手をじっと見下ろす。
あの時現れたのはガマ竜だったが、初めての【口寄せの術】成功で、ナルは思わず彼の手を握ってクルクル回った。別れ際にも、もう一度手を握って約束
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ