第五十二話 その手に幸せをその八
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「私もそのことがわかったわ」
「性別が同じでも恋人同士になれてな」
「性別が違ってもお友達になれる」
「そういうものなんだよ、そもそも俺達はずっと前からだからな」
「友達だからね」
「御前が男の子だった時からな」
「ええ、今では懐かしいわ」
優花は自分の性別が男だった時のことを思い出してだ、くすりと微笑んでそのうえで龍馬に対して話した。
「あの頃がね」
「そうだよな」
「そしてあの頃からね」
「俺達は友達だからな」
「そこが違うわよね」
「ああ、このことは俺は誰にも言わないけれどな」
それでもというのだ。
「俺達は友達だよ」
「恋人じゃなくて」
「このことは誰にも言えるさ」
龍馬は言い切った。
「胸を張ってな」
「そうよね」
「それとな」
龍馬はさらに言った。
「御前もだよな」
「ええ、誰にもね」
「俺達が友達って言えるな」
「隠しごとなくね」
そうしてとだ、優花も龍馬に答えた。
「言えるわ」
「そうだな、じゃあこれからもな」
「ええ、神戸に戻ったら」
「お祝いのパーティーしような」
「神戸に戻った、高校を卒業した」
「そして大学に入学した」
「新しい人生の門出をな」
祝福する、その為にというのだ。
優花は龍馬とそうした話をしてだった、この日出来ることを全てしてだった。そのうえで早いうちに寝てだった。
翌朝早く起きてだ、すぐにだった。
大家に挨拶をした、それから早いうちに来てもらった運送屋に残っていた最後の荷物を実家に送ってもらい。
部屋を後にした、その時部屋に向かって別れの言葉を告げた。今まで有り難うと。
それから療養所に向かい副所長や岡島に挨拶をした、すると副所長は優花に対して優しい笑顔でこう言った。
「おめでとう」
「おめでとうですか」
「ええ、新しい人生の門出を迎えられたからよ」
「おめでとうって言ってくれたんですね」
「そうよ」
その優しい笑顔での言葉だった。
「そう言ったのよ」
「そうですか」
「じゃあ神戸に戻ってもね」
「はい、楽しく過ごしてきます」
「幸せにね」
副所長は優花にこうも言った。
「ずっとね」
「ずっとですね」
「命が終わるその時まで」
人は必ず死ぬ、だがその時が来るまでというのだ。
「幸せでいてね」
「本当に最後の最後までですか」
「そうよ、貴女の幸せを過ごしね」
人生の最後の最後までというのだ。
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