第64話<決意と鎮魂歌>
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え行動しなければならない。
それが生き残った者(戦士)への、せめてもの償いなのだ。前進し、勝利を刻み続けることが去って逝った者たちへの最大の鎮魂になるのだから。
埠頭の一同は、堂々と立ち上がった北上と私を固唾を呑んで見守っていた。
しかし深海棲艦は相変わらず無表情のままだろうか?
「……いや、何か言うぞ」
呉オジさんが言う。すると神戸を始め全員が海上に注目した。
下を向いた深海棲艦は激しく頭を振っている。
「チガウ……」
否定した。やはり彼女は大井ではないのか?
「ワタシハ……」
その顔に初めて表情のようなものが浮かんでいた。
「チガウ……」
彼女は自分の両手を開いてジッと見詰めている。今までの無表情から一転して、とても険しい表情になっていた。
「ありゃ、深海棲艦の髪が……」
青葉が言うまでも無く急に彼女の髪の毛が逆立ってきた。その長い髪がまるでメドゥーサか何かの生き物のように勝手に宙を舞い逆立っている感じだ。
「これってかなりマズい?」
神戸が言う。
確かに尋常ではない雰囲気になってきた。風は強くないのに、湾内には変な白波が激しく立ち始めている。
深海棲艦の周りの手下共も変な光を点滅し始め盛んに白い歯を見せている。そして地響きのような轟音が響く。
「じ、地震なのです!」
電が叫ぶ。
その言葉の如く地震のような振動が埠頭一帯を包んでいた。大地だけでなく、空気までもが激しく振動しているようだ。
「皆さん、撤退してください!」
大淀さんが命令を出したが……あれ? 誰も動かない。
「いや動けないのさ」
こんなときまで沈着冷静な響だな。
この周りの連中は皆、腰が抜けたか? そもそも大淀さんも、まるで金縛りにあったように動かない。
「おい、動けないのか?」
寛代に聞いても彼女は私の手を必死に掴んで離さない。だから私も結局、この場から動けない。
「これは……」
海の上を見た私はハッとした。髪の毛を逆立てた深海棲艦は……そう、まるであの『悪夢』そのものだった。
「北上ぃ!」
私は海上に必死に叫ぶ。
「お前だけでも早く逃げろ!」
だが彼女は荒ぶる深海棲艦を見詰めたまま微動だにしない。
彼女の瞳は、すべてを受け入れたような……あの悪夢に出てくる軽巡とは正反対の澄んだ表情だった。
「北上……」
私は焦るばかりだった。
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