第64話<決意と鎮魂歌>
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「チガウ……」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第64話<決意と鎮魂歌>(改)
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「でもさ」
そのとき北上の口調が急に変わった。
何かを察した比叡が気を利かせて探照灯を北上に向けた。(……比叡、良い仕事するな)
月夜を背景に探照灯に浮かび上がった北上。その姿は、ますます月下美人っぽい。
思いを込めたように彼女は言った。
「過去はサ……もう戻らないんだよ」
その黒い瞳が透き通るようだ。風が少し強くなってきて彼女の長い髪が胸の前で左右に揺れている。
お腹は痛くないのだろう。いつの間にか腹を押さえるのは止めていた。
北上は揺れる髪の毛を片手でサッと肩の後ろへ払い退けた。そして、深海棲艦へ語るように言った。
「お互い、もう変わらなきゃ? ね……」
『おお!』
埠頭で見ている艦娘たちから一斉にどよめきが起こった。
北上が深海棲艦(大井?)に啖呵(タンカ)切ったぞ。
「役者だなぁ」
コレは青葉。
私も続けて深海棲艦(大井?)に話し掛けた。
「北上の言うとおりだ。そして……君」
私は『彼女』を見詰めた。相手は無表情のままだが、視線はこちらを向いた。
改めて心を込めて言った。
「私は君に心から申し訳ないと思っている」
それを受けた北上もまた頭を少し斜めにして私を見て微笑んだ。彼女のその長い髪が風に揺れた。
何だろうか? そんな魅力的ともいえる彼女の姿を見ても不思議といつもの『ドキドキ感』が無い。
そのときの私と北上は、いわゆる一般的な『男女』としてではなく純粋に指揮官と部下……そうだな、同志としての連帯感を感じたのだ。つまりこのとき突然、彼女と心が通い合う感覚に包まれた。
それは寛代と接するときの雰囲気にも似ていた。思わず私は改めて手を握ったままの寛代を見た。すると彼女もこちらを見上げていた。
「……」
彼女は珍しく微笑んでいた。
「そうか、お前はずっと以前から私に心を開いてくれたんだな」
「うん」
彼女の普通の肉声を初めて聞いた気がした。
軍人であることに加えて私は性格的にも女性と心を通わせるなんて意外なのだが。まさか、初めて心を通わせる相手が艦娘とはな……不思議な縁だな。
私は再び正面を見据えた。
北上が一つの壁を越えたように私もまた、指揮官として重い足かせを、いつまでも引きずってはいられない。
北上と共に、これまでの過去の私とは、ひと区切りさせて貰おう。
提督とは個人のためではなく、国家や公のために。また皆のために考
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