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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十一話 イゼルローンにて(その1)
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った。全てを彼に負わせてしまったのだ。ワイドボーン大佐の嘆きは彼一人のものじゃない。皆が自己嫌悪に陥っている。彼を死なせることは出来ない。

「ヴァレンシュタイン大佐を死なせることは出来ません。だから私はここに来ました。戦闘では役に立たないと思います、でもいざという時は弾除けの代わりくらいにはなれると思います。本当は生きて帰りたいですけど」

ミハマ大尉が明るい声で話している。自分で言っていて可笑しくなったのだろう、彼女が笑い声を上げた。全く同感だ、俺も笑い声を上げていた。

「……随分と想い入れが有るようだ」
シェーンコップ大佐がこちらを見定めるような視線を向けてきた。
「そうですね。彼とは長い付き合いです、色々と想いは有ります……。問題はそれが片想いだという事なんですよ」

片想いか、戦場には似つかわしくない言葉だ。だが今のヴァレンシュタイン大佐は周囲と関わりを持つのを避けようとしている。ワイドボーン大佐も俺もミハマ大尉もその事で苦しんでいる。もしかするとヴァレンシュタインも苦しんでいるのかもしれない。まさに片想い以外の何物でもない……。

「情の強い人ですからね」
「意地悪で根性悪ですし」
「それに怖い所のある美人だ」
「本当は優しい人ですよ、大佐は」

気が付くと皆で笑っていた。全く此処にいるのはどうしようもない連中だ。俺も含めて度し難い馬鹿ばかりだ。しかし、それも悪くない……。



宇宙暦 794年 10月20日  イゼルローン要塞 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「ヴァレンシュタイン大佐、こっちです」
リンツが俺を小部屋に案内した。多分物置部屋かなんかだろう。此処がイゼルローン要塞のどのあたりになるのか、今一つよく分からん。

「武装は解除していますが気を付けてくださいよ。大佐に万一の事が有ったらシェーンコップ大佐に殺されますからね」
「大げさですね」
「とんでもない、本心ですよ」
分かった、分かった。だから荷電粒子ライフルも持っているじゃないか、安心しろ。

部屋の中に入ると兵士が三人、こちらに敬礼してきた。どうやら見張りのようだ。答礼しつつ部屋の中を見渡すと四人の帝国人が居た。四人とも気密服は着ているがヘルメットはしていない。三人は座っているが一人は横になって蹲って腕で顔を隠すようにしている。

肝が太いのか、それとも負傷しているのか……。多分負傷だろう。寝ている奴がいるとしたらアントン・フェルナーぐらいのものだ。少し離れたところからさりげなくライフルを構えた。三人の顔に緊張が走る。

「教えてほしい事が有ります。答えてください」
「……」
問いかけると三人が俺を胡散臭そうな表情で見た。一人は長身のようだ、もう一人は腕に怪我をしている。後の一人はかなり体格が
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