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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十一話 イゼルローンにて(その1)
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は伊達じゃない。
「損害は大きかったのですか?」
「伏撃を受けた、一方的に攻撃を受けたんだ。場所もよくなかった。狭い通路で身を隠すところが無かったからな。あっという間だったよ、百人ほどが死んだ……」
シェーンコップ大佐が顔を苦痛に歪めている。
「ヴァーンシャッフェ准将もその時に戦死しました。ローゼンリッターは指揮官を失いさらに混乱した……」
ブルームハルト大尉の声は淡々としていた。しかし表情はシェーンコップ大佐同様、苦痛に歪んでいる。
「ヴァーンシャッフェ准将を責められん。要塞に入ってからほとんど抵抗を受けなかった。奇襲は完全に成功した、連隊長はそう思ったんだ、俺もそう思った。あそこで伏撃など誰も考えていなかっただろう」
本心から言っているのか、それとも死者の名誉を守ろうとしたのか、或いはその両方か……。話を変えた方がよいだろう。
「……シェーンコップ大佐が無事だったのは幸いでした」
「俺は後方にいたからな、運が良かった、それとも悪かったのかな。崩れたつ味方をなんとかまとめるので精一杯だった。結局三百人程が戦死しただろう。重傷者も似たようなものだ、部隊は約五分の一を失った……」
その状態で逆撃をかけた、簡単にできる事じゃない。ヴァーンシャッフェ准将を失い、連隊も大損害を出した。それでもシェーンコップ大佐という新しい指揮官を得ることが出来た……。
「ところで最後尾の件、お聞きになっていますか?」
「聞いている。まあ俺達がやることになるだろうとは思っていた、予想通りだな」
「……」
淡々とした口調だった。ブルームハルト大尉も平然としている。これまでにも似た様な事は有ったのかもしれない。
「予想が外れた部分もある」
「と言うと?」
「貴官達が最後まで付き合うという事だな。物好きなことだ」
そう言うとシェーンコップ大佐とブルームハルト大尉が笑い声を上げた。思わず俺も笑い声を上げた。ミハマ大尉も苦笑している。
「ロボス元帥が解任されたことは?」
「それも聞いた、ローゼンリッターなど磨り潰しても構わん、そう言ったそうだな。それでグリーンヒル大将が二百十四条を行使したと……、違うのか?」
俺達の表情に気付いたのだろう、シェーンコップ大佐が尋ねてきた。
「正確にはヴァレンシュタイン大佐が二百十四条の行使を進言したのですよ。それなしではロボス元帥の解任は無かったでしょう」
「……」
「その上で此処に来ることを志願しました。一つ間違えば捕虜になる危険性が有る。ですが総司令部が将兵の信頼を得るためには総司令部の人間が犠牲になる覚悟を示す必要が有ると言って此処に来たんです」
「……それでは堪りませんな」
ブルームハルト大尉が呟くように言葉を出した。その通りだ、総司令部はまるでお通夜の様だ
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