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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十一話 イゼルローンにて(その1)
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れば総司令部に不満を持っていると思われるのではないか、相手にそう思わせることで口を噤ませる……。案の定、シャープ准将は不満そうでは有ったが、口には出さなかった。

「最優先で撤退させるのは負傷者となりますが?」
「問題ない、第三混成旅団もローゼンリッターも負傷者は一つにまとめている、最優先で撤退させる必要が有るからな」
胸を張って言わんでくれ。大して自慢になることでもない。

「ではその後に強襲揚陸艦の乗組員、第三混成旅団となります」
「……第三混成旅団は一度では運べんな……」
「そうですね、閣下には次の艦隊で撤収という事になります」
シャープ准将が顔を顰めるのが見えた。指揮官なんだから当然だろう、そんな顔をするな、情けない……。

「……やむを得んな。総司令部の決定とあれば」
「宜しくお願いします。小官はヴァレンシュタイン大佐の後を追わねばなりません。ではこれで」
「うむ」
そうそう、それでこそ指揮官だ。頑張ってくれよ、シャープ准将。ああ、それから案内を付けてもらわないと……。


ローゼンリッターのシェーンコップ大佐は仮の司令部を設置して部隊に指示を出していた。傍にいるのはブルームハルト大尉か。しかし大佐は居ない……。思わずミハマ大尉と顔を見合わせた。大尉も訝しげな表情をしている。

「よう、来たな。ヴァレンシュタイン大佐から貴官達の事は聞いている」
陽気な声をシェーンコップ大佐が答えた。ヴァレンシュタイン大佐が此処に来たのは間違いないようだ。であれば先ずは……。

「ヴァーンシャッフェ准将の事、残念でした」
俺の言葉にシェーンコップ大佐とブルームハルト大尉が表情を改めた。
「ああ、お気遣い痛み入る。だが此処は戦場だ、それ以上は後日にしよう」

「そうですな、先ずは生きている人間を何とかしなければ」
「全くだ、特に生きている敵を何とかしなければな」
シェーンコップ大佐が不敵な笑みを浮かべた。頼りになる男だ、苦境でこういう笑みを浮かべることが出来るとは……。

「ヴァレンシュタイン大佐はどちらに」
ミハマ大尉が問いかけた。
「捕虜を調べている、帝国軍の情報を得ようとしているようだ」
「捕虜?」

押されているのはこっちだ、捕虜が居るのか? 俺だけじゃない、ミハマ大尉も訝しげな表情をしている。そんな俺達が可笑しかったのだろう、シェーンコップ大佐が笑い声を上げた。ブルームハルト大尉と顔を見合わせている。

「十発ぐらいは殴られたが、こっちも三発ぐらいは殴り返した。そうじゃなければ連隊は壊滅しているさ」
「なるほど、さすがはローゼンリッターですな」
「世辞は良い」
世辞じゃない。伏撃を受け、連隊長を失ったのだ。一方的に叩かれてもおかしくはなかった。戦闘力は一個師団に相当する、その評価
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