第63話<最果ての追憶>
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すまん」
この空間は北上と敵の『語らいの場』となりつつある。それは彼女の周りの敵駆逐艦たちもジっとしていることからも伺えた。
不思議なことだが敵の手下どもは『命令がないから』動かない……というよりも敵の白い肌の『彼女』と一緒に北上の告白を聞いているように感じられる。
そもそも深海棲艦も北上の言葉に何か感じ始めているんじゃないか?
北上は深呼吸をするように間を取ってから続けた。
「こんなことしてまで、また出てきちゃってさ」
まだ深海棲艦は無表情で北上を見詰め続けている。
「ま、アンタらしいけどね」
北上は、かなり回復したのだろう。ゆっくりと立ち上がる。それから焦げた前髪を片手でさっと払い退けた。
そうして一瞬だけ私のほうをチラッと見た。それから意を決したように言った。
「ホントはアンタも司令を追ってきたんだろ? ここまで……」
「え?」
驚く私。
「えぇっ?」
これは比叡。さすがに目を丸くしている。
「なに? ソレ!」
おい、青葉めっ、言いながら写真を撮るな!
大井の件については私も反省はしていた。しかし北上の意外な指摘に度肝を抜かれたのだ。
その『大井(仮)』が私を追ってきた? いや、北上は今、何て言った?
『アンタも司令を追って』
……それって、つまり北上も私に何らかの想いを抱いているって言うことなのか?
焦り始めた私。
「あ……」
見ると比叡は既に変顔でこっちを見ている。
参謀たちはともかく大淀さんまでが疑うような眼だぞ。
……いや、知らない知らない! それはゼッタイに無いって!
まあ今更、確認のしようもないけど。
もしここが昼間の時間で明るかったら私は赤面している姿を晒した事だろう。暗くて良かった。
焦りながらも寛代と私は手を?いだままだった。慌てて手を離すのも変だろうと思って、そのまま握っていたけど……彼女は無表情だった。やはり、この子もマイペースで沈着冷静なのか。
こちらを見て何かを言いかけていた北上だったが、少し私の周囲が落ち着いた様子を見て再び敵に相対して続けた。
「ここはさ、辺境なんだよ。西の最果ての地さ」
北上はポツリといって、ふっと寂しい顔をした。
「最果ての地か」
なぜか舞鶴が同意するように頷いている。
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