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木ノ葉の里の大食い少女
第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
ナルト
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誰かに見てもらいたいと思うようになった。誰かに見てもらえない自分が存在しているのかどうかすら危うく感じ始めていた。火影になれば嫌でも何でも認められると思って、火影を目指していた。いやでもなんでも見てもらえるように悪戯をした。
 やがて、うみのイルカ、うちはサスケ、春野サクラにはたけカカシ――自分を認めてくれる人たちが現れ始めた。イルカはいつも優しく微笑みかけて、暖かい陽だまりのような存在だと思えた。サスケは小ばかにした態度をとり、サクラはうざいだのなんだの言いながらも、二人ともなんだかんだで楽しそうにしていた。カカシはいつも遅刻してばかりながら、偶に野菜の差し入れを持ってきたり、修行にも的確なアドバイスをくれた。
 だからもう前ほど苦しくはない。ずっと楽しい。火影になるという夢と、七班とイルカと皆と一緒にいるという夢のどちらを優先するかと聞かれたらきっと確実に後者を答える。もっと沢山の人に認められたいという願望はあるけれど、七班のみんなやイルカと楽しく暮らしていたいという想いの方が大きい。
 こんなに嬉しくて幸せなものだとは思わなかった。こんなにきらきらしたものだとは思わなかった。悪戯していた時も楽しかったけれど、虚しかった。自分が存在していることを強く実感し、そして存在していることを楽しく思った。だからこそ以前のことを思うと余計苦しくなる。直接殴ったり蹴ったり罵られたりする方がよっぽど楽なくらいなのに、こそこそと隠れ、背後で化け狐と吐き捨てられる声を聞くほうがまるでゆっくりと絞め殺されているかのように苦しく思った。
 以前の記憶はまるで、暗く淀んだ水中のようだった。
 我愛羅の目を見つめなおす。見える我愛羅の闇は深く、濃い。ナルトのそれよりもずっとずっと。我愛羅はきっとナルトよりも深く淀んだ水底にいる。嬉しいと思うことやほっとすることもなく、水中の息苦しさの中でただずっと蹲っている。認めてくれる人も誰もいないまま。
 きっとナルトがここまで明るく立ち直れたのは、まず一つに最初から余り親しい人がいなかったから、親しい人に、唯一の味方だと思ってた人に殺されかけなかったから、そして二にその天性の明るい性格からだろう。幼い頃内向的で情緒不安定になり易く、尚且つ唯一の味方と思い込んでいた人に殺されかけたことから我愛羅は狂気に抱かれた。同じ人柱力でも、辿った道は大きく違った。

 +

 一歩違えば自分だって歩んでたかもしれない道だ、とナルトは目の前の砂色の狸を見つめる。彼からしたらナルトは幸せに、のうのうと生きる弱虫でしかないのかもしれない。
 ――こんな奴に、本当に俺は勝てんのか?
 ついつい、弱気になってしまう。いつだか大蛇丸相手に弱気になったサスケが彼に巻物を差し出してしまったことがあった。サスケもあの時あんな気持ちだったのか、と思う。
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