第59話<北上中破>
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だが目が慣れてくると大きな裂け目の出来た埠頭の向こう側……白濁した海面上に北上が蹲っているのが見えた。
「北上?」
大丈夫だろうか?
海面はシュワシュワと泡の弾ける音を立てている。何しろ至近距離での魚雷の爆発だ。しかもコンクリートの埠頭で直接、炸裂しているから反射される衝撃波は想像以上に大きくなる。おまけに不意打ちだ。彼女は、かなりダメージを受けただろう。
爆破による霧や埃が薄くなって来て北上の様子もハッキリ視認することが出来た。
「北上……」
あまりに彼女の悲惨な様子に私は思わず絶句した。その軍服はボロボロで腕が半分露出している。腕や顔もススで黒くなり髪の毛も少々、焦げているようだ。可哀相に口元からは少し出血もしているようだ。
私は念を入れるように、もう少し上体を起こして声をかけた。
「おい、大丈夫か?」
彼女は片手で腕を押さえながら弱々しく顔を上げて返事をした。
「あ、司令……だ、大丈夫だからさ」
「いや……」
絶対に大丈夫じゃないだろう……彼女は口元の血をぬぐいながら健気に微笑む。無理するな、その表情が痛々しい。
突然、私たちの後方から軽い声で呼ぶ声がした。
「司令ぇ!」
パタパタと軽い足音を響かせながら高速接近して来る比叡、相変わらず地上でも脚は速い。そこは褒めてやろう。
私と舞鶴の状況を見た彼女は驚いて目を丸くした。
「司令! お怪我は?」
私は振り返って応えた。
「多少、打撲しているが大丈夫だ」
それから私は一気に、まくし立てた。
「比叡! 直ぐに無線で全チャンネルに状況報告。敵の雷撃により埠頭が大破。現場の北上が中破。司令と舞鶴は打撲したが、かすり傷だ。必要以上に他の艦娘を埠頭に近づけさせるな!」
「は?」
私の指示に対して呆けた比叡……拍子抜けした。
ダメだ! こいつの記憶容量じゃ覚えきれないのか?
「参ったな」
思わず頭を抱えた。
北上も早く救出したいが混乱して支援体制がバラバラだ。
そうしているうちに艦娘たちが徐々に集まって来た。
「おい、不用意に集まったら敵の思う壺だぞ!」
艦娘たちも聞く耳を持たないな……せめて祥高さんか大淀さんに艦娘たちが下手に動かないようパーティ会場で指示をしてくれていたら……私は焦ったが既に手遅れか。
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