第59話<北上中破>
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「すまんな、恩に着るよ」
「礼は後だな」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第59話<北上中破>(改)
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ドカンという大きな音と共に水しぶきが舞い上がり地面が激しく揺れた。至近距離での魚雷の爆発……一瞬、鼓膜が破れるかと思った。
さすがに弓ヶ浜の用水路よりはマシだけど大の男が二人で抱き合って草むらへダイブすれば十分に痛い。
「痛てて」
「うぅ……」
激しい爆風で吹き飛ばされた私たちの周りに大粒の海水と無数のコンクリート片が降り注ぐ。
「大丈夫か?」
「何とかね……」
この期に及んでも口数の少ない舞鶴だが……まだ私たちには意識があった。何とか生き延びたようだ。
しばらくはジッとしていたが、やがてお互いに顔を上げると適当に身体を離して周りの様子を伺った。
草むらに伏した私たちの辺りにも鈍い音が断続的に響く。
魚雷の衝撃波で鎮守府の施設にも一部、影響が出たらしい。時間差で、あちこちの物が倒れたり、落下する音がしていた。艦娘の叫び声も聞こえる。皆、大丈夫だろうか?
ただ幸いだったのは埠頭のコンクリートは頑丈らしく、あまり大きな塊は飛ばなかった。ある程度、小さい破片が飛び散っただけ済んだ。
舞鶴が冷静さを取り戻して言った。
「チッ、深海棲艦が使うタイプの魚雷だな」
「ああ、恐らくな」
しかし港湾内での雷撃とは、まるで特攻だ。
「無茶しやがる」
「……」
私はふと舞鶴を見ると彼と目が合った。つい冗談を言いたくなった。
「まるで兵学校時代の訓練の繰り返しだな」
「ははは」
私の言葉に乾燥した笑いだったが舞鶴が始めて笑った。
……そういえば学生の頃から私は退避訓練は苦手な科目だった。
ただ学校の訓練も、こういう現場では何十年経っても役に立つものだな。
しかし新しい制服が風呂で濡れて、次のピンク作業服まで、またビショビショか。いくら海軍とはいえ私は毎回水難の相だな、やれやれ……。
それでも気を取り直して周りの様子を確認した。
警戒中の艦娘たちが銃を抱えて慌てたように走ってくる。一部の艦娘は探照灯を持って夜の湾内へと展開しようと検討し始めているようだ。
チラッと海へ向かう大淀さんの姿が見えたが、さすがに躊躇している様子だな。
ただ、これなら直ぐに第二次攻撃はないか? 私が立ち上がろうとしたら舞鶴が私の腕をつかんで言った。
「すまんな、恩に着るよ」
「礼は後だな」
私は彼にそう応えると二次攻撃に警戒して身を屈めながら海に叫んだ。
「北上ぃ!」
返事は無い。私の声が空しくエコーするだけだ。
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