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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十話 救出作戦
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「……」

「ワイドボーン大佐」
「はい」
「彼を水臭いとは思うな。いざとなれば全てを自分が被る。彼はそう考えてしまう人間なのだ」

労わる様な声です。参謀長は優しそうな笑みを浮かべていました。
「だから悔しいんです。自分はまだ彼から信頼されていないのかと思うと……、情けないんです……。あいつが心配です、また無理をするんじゃないかと……」

切なさが溢れてくるような声でした。ワイドボーン大佐が以前言った言葉を思い出しました。
“信頼というのはどちらか一方が寄せるものじゃない、相互に寄せ合って初めて成立するものだ”

ワイドボーン大佐はヴァレンシュタイン大佐との間に信頼を結びたがっています。でもその信頼を結ぶことが出来ずに苦しんでいる……。今更ながら信頼を結ぶという事の難しさを思い知らされました。

「私も行きましょう」
「バグダッシュ中佐……」
陽気な声でした。中佐の顔には笑みが有ります。参謀長と同じ笑みでした。

「彼とは長い付き合いです、嫌がるかもしれませんが私も行きますよ。大丈夫、必ず彼を連れ帰ってきます。それに此処にいるより彼の傍にいる方が安全かもしれない。彼は無敵ですからね」
おどけたようなその言葉にようやく艦橋に笑い声が上がりました。

「すまん、バグダッシュ中佐」
ワイドボーン大佐が頭を下げました。笑わなかったのは大佐だけだと思います。小さな声でした。

「私も、私も行きます」
「ミハマ大尉……」
「お願いです、私も行かせてください」

気がつくと私はバグダッシュ中佐に、ワイドボーン大佐に頼んでいました。私に何が出来るか分かりません。でも行きたい、行かなければならないと思いました。大佐の前で俯くようなことはしたくない、正面から大佐を見る事が出来る人間になりたいと思ったんです。

嫌われてもかまいません、憎まれてもいい。でも信頼はされたい……。いざという時、逃げるような人間じゃない、そう思われたかったんです。大佐が二百十四条を出した時、私は何もできなかった。あんな思いはもうしたくありません。

「此処にいる方が安全だ」
「ヴァレンシュタイン大佐の傍の方が安全です」
私の言葉にバグダッシュ中佐が苦笑しました。

「少しは出来るようになったか……。良いだろう、付いてこい。但し自分の面倒は自分で見ろよ。それが良い女の条件だ。閣下、お許しを頂けますか? もっとも駄目と言われても行きますが……」

グリーンヒル参謀長が苦笑しました。
「否も応も無いな。二人とも気を付けて行け」
そう言うと参謀長はまた苦笑しました。

バグダッシュ中佐が歩き出しました。私もその後に続きます。危険極まりない所へ行くのに私の歩みは可笑しなくらい弾んでいました。ようやく私は最初の一歩を踏み出すことが
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