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風魔の小次郎 風魔血風録
6部分:第一話 小次郎出陣その六
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りません」
「確かに」
 夜叉姫もその言葉に頷く。頷きながら己の席に着く。それで下半身が見えなくなり威厳がさらに増して見えた。小柄であるのにその威圧感はかなりのものだった。
 夜叉姫は席に着くとまずは手を動かした。チェスの駒を一つ手に取った。
「ナイトが動いたか。向こうの」
「こちらも切り札を出すべきです」
 武蔵の今度の言葉はこうであった。
「切り札を」
「夜叉八将軍を出しましょう」
 彼は言った。
「そうして一気に勝負を」
「馬鹿な」
 だが夜叉姫は武蔵のその言葉を一蹴した。顔をさらに強張らせて。その美麗な顔にさらに不吉な険を見せながら。
「武蔵、貴方は何を言っているのですか」
 武蔵に対して言葉にもそれを含めて告げた。
「夜叉八将軍は夜叉一族最強の忍達」
「はい」
 武蔵もそれは認識しているようだった。こくりと頷いてみせる。
「だからこそです」
「今制圧している八つの地域の抑え」
 夜叉姫はこれも言う。
「それを動かせばようやく制圧したその地域が全て」
「ですがこのまま風魔を放っておけばやがては」
「武蔵!」
 言葉がさらに険しいものになった。まるで牙の様に。
「それには及びません。切り札はこの誠士館にもあります」
「それは一体」
「まずは貴方です」
 武蔵を見据えて彼自身に告げた。やはりその威圧感はかなりのものだ。少女のものではない。
「貴方にはその為に多額の報酬を支払ってここに置いているのです」
「はい、それは」
「まずは貴方を向かわせ。そして」
 またチェスの手の駒を取った。今度は黒いナイトであった。
「壬生!」
 不意に人の名を叫んだ。
「壬生攻介はおるか!」
「はっ、夜叉姫」
 夜叉姫のその言葉と共に部屋に一人の男が入って来た。やはり誠士館の超長ランを着ており日本人離れした流麗な顔に黒く、腰にまで届きかねない長い髪を持っている。彼は静かに夜叉姫の前、武蔵の横にやって来たのだった。 

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