第55話<隻眼と天使>
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が出来るほどのメッカかどうかは知らない。ただ弓ヶ浜は遠浅だからソコソコ水遊びくらいは楽しめたはずだ。
夏の美保湾は大山がよく見えて海は青くて、町にも近いから便利で良いんだよな。
龍田さんは寝ている天龍の髪の毛を、なでながら続けた。
「あたしも天龍ちゃんも旧いタイプの軽巡だから泳ぐのも得意なんですよ。あと水着も……」
「え?」
思わず声が出た。
龍田さんは、少し妖艶な笑みを浮かべた。青白い月明かりと彼女の頭上に黄色く光る輪の微妙な陰影。
まずい、ちょっと鳥肌が……だが直ぐに彼女はニッコリと微笑む。
「今度、みんなで海水浴にも行きたいですね」
龍田さんは鼻から抜けるような声で、こちらを見上げた。
「……あ、ああ。考えておくよ」
私の言葉に彼女は、とてもゆったりとした声で応える。
「どうぞ、よろしくおねがいします」
龍田さんの瞳は静かにキラキラしていた。山城さんや赤城さん、あるいは比叡とも違う龍田さんの瞳の輝き……妄想が爆発しそうだ。
「司令、呼び止めて申し訳ありませんでした」
彼女は、少し首を傾げて微笑んで言った。
この二人は何となく荒ぶる印象があったけど……改めて今夜は、二人とも存在感があって、かつ大人っぽい。(一人は夢の中へ轟沈しているが)それでいて期待するのは海水浴か?
青い月明かりにボウッと浮かび上がっている龍田さんと天龍……不思議な艦娘たち。何かキツネに詰まれたようだ。
「では行くよ」
「はい……私は暫く、ここに居ますから」
私は龍田さんに会釈をして再び、歩き出した。
中庭を過ぎて工廠の建屋を越えると、そこはもう海だ。ここが鎮守府の夜の埠頭だ。打ち寄せる波の音が心地良いのだが……それを打ち破るかのごとく男女が言い争うような刺々しい声が聞こえた。
尋常ではないな……と声のするほうへ近づく。
ん……やっぱりあの声は舞鶴らしかった。なんだろう、この罪悪感。ちょっとドキドキする。
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