暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
ヨツンヘイム
[6/11]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
押しに突き動かされたのか、キリトは右手の人差し指を伸ばすと、膝の上で眠る長身10センチほどの少女の頭をつついた。
「おーいユイ、起きてくれー」
呼び掛けると、長い
睫毛
(
まつげ
)
を二、三度震わせてから、ピンク色のワンピースに包まれた小さな体をむくりと起こした。右手を口元にあて、左腕を高く伸ばして、大きなあくびを1つ。その仕草が実に可憐そのもので、リーファはつい見とれてしまう。
「ふわ……。おはようございます、パパ、リーファさん、ネザーさん」
極細の銀糸を
爪
(
つま
)
弾
(
び
)
くような声で挨拶する小妖精に、キリトは優しい声で語りかけた。
「おはよう、ユイ。残念ながらまだ夜で、まだ地底だけどな。悪いけど、近くにプレイヤーがいないか、検索してくれないか?」
「はい、了解です。ちょっと待ってくださいね……」
こくっと頷き、瞼を閉じる。
すぐにぱちっと眼を開いた少妖精は、申し訳なさそうに長い耳を垂れさせ、艶やかな黒髪をふるふると横に振った。
「すみません、わたしがデータを参照できる範囲内に他プレイヤーの反応はありません。いえ、それ以前に、あの村がマップに登録されてないことにわたしが気づいていれば……」
キリトの右膝の上でしょんぼり項垂れるユイの髪を、リーファは反射的に指先で撫でていた。
「ううん、ユイちゃんのせいじゃないよ。あの時はあたしが、周辺プレイヤーの索敵警戒を厳重に、なんてお願いしちゃったから。そんない気にしないで」
「……ありがとうございます、リーファさん」
と、
潤
(
うる
)
んだ瞳で見つめられれば、このピクシーを動かしているのがプログラムコードなのだとはにわかに信じられなくなる。本心からの微笑みを浮かべ、ユイの小さな翅をそっと触れてから、リーファはキリトへと視線を移した。
「ま、こうなったら、やるだけやってみるしかないよね」
「やるって……何を?」
瞬きするキリトに、今度はニヤッと不敵に笑いかける。
「あたし達だけで地上への階段に到達できるか、試してみるのよ。このままここで座ってても、時間が過ぎてくだけだもん」
「で、でも、さっき絶対無理って……」
「九分九厘無理、って言ったのよ。残り1パーセントに賭けてみよ。はぐれ邪神の視界と移動パターンを見極めて、慎重に行動すれば可能性はあるわ」
「リーファさん、かっこいいです!」
小さな手でぱちぱち拍手するユイにウインクを返し、リーファはすくっと立ち上がろうとした。
しかし、その袖をキリトが強く掴んで引き戻した。
「な、何よ?」
よろけながら再び座り、抗議しようとしたが、至近距離から真っ黒い瞳を向けられて思わず黙る。キリトはじっとリーファを凝視し、これまでの
暢気
(
のんき
)
さが抜け落ちた
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ