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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
ヨツンヘイム
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は聞こえないよう小声で呟く。

続いてリーファもふうっと息を吐き出し、言う。

「本当よねぇ……。誰よ、アルン高原にはモンスター出ないなんて言ったの」

「リーファだろ」

「記憶にございません」

謎の村に降り立った3人は、まず住民__NPCの姿がまるでないことに首を傾げた。それでも宿屋の店主くらいはいるだろうと、もっとも大きい建物に入ろうとした、その瞬間。

村を構成していた3つの建物が、全部同時にどろっと崩れた。ぬるぬる光る肉質のこぶになってしまった宿屋にあんぐり口を開ける暇もなく、足元の地面がぱっくりと左右に割れた。その奥にあったのは、うぬうぬ蠕動(ぜんどう)する暗赤色の洞窟。そう、村と見えたのは、地面に埋まっていた恐ろしく巨大なミミズ型モンスターが、口の周りの突起を変化させて作った寄せ餌だったのだ。

ネザー、キリト、リーファ、そしてキリトの胸ポケットに入っていたユイは、強烈な吸引力によってひとたまりもなく丸呑みされた。巨大ミミズのぬるぬる滑る消化管にぐびりぐびりと運ばれる間に、このまま胃酸に溶かされるのだとしたら、間違いなく1年間のALOプレイ歴で最悪の死に方だ!と確信したりもした。

しかし幸いリーファ達はミミズの口に__正確には胃に合わなかったようで、およそ3分近くも続いた消化器ツアーの末に、ぽいっと放り出された。全身にまとわりつく粘液の感触に鳥肌を立てながら、とりあえず背中の翅で落下を止めようとして、リーファは再び戦慄した。

飛べなかったのだ。どれほど肩甲骨に力を込め、翅を震わせようとも揚力(ようりょく)が生まれない。いずことも知れぬ薄暗闇の中を、続けて排出されたネザーとキリトと共に一直線に落下し、ぼすん!と深い雪に埋まり込んだ。

じたばたもがいて雪から顔を引っ張り出したリーファがまず最初に見たのは、月や星の輝く夜空の代わりに果てしなく広がる岩の天蓋だった。洞窟か、道理で飛べないわけだ、と顔をしかめながらぐるりと視線を巡らせた途端、眼を鼻の先の雪原をゆっくり移動していく、見上げるような異形の姿が眼に飛び込んできた。それが、写真でしか見たことのない恐るべき《邪神級モンスター》であることは疑いようもなかった。

すぐ横に顔を出し、何かを喚こうとしたキリトの口を全力で押さえながら、リーファは悟った。自分が、ALOにダイブして初めて、広大無辺の地下世界、災難度フィールドたる《ヨツンヘイム》にやって来てしまったのだということを。つまり、あの巨大ミミズは、プレイヤーを捕食するためではなく、この氷の国へと強制的に移動させるために存在するトラップだったということになる。

5階建てのビルほどもありそうな多脚型の邪神をどうにかやり過ごしてから、リーファ達はほうほうの体でこの祠を見つけて避難し、前後策を練るこ
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