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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
橋上の決着
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の回転を上げる。

長いワードを唱え終わった途端、掲げられたネザーの右手から紫紺(しこん)に輝く複数の球体が現れ、ビィィィと空気を鳴らし、火球の雨に目掛けて一斉に発射されていく。

闇属性魔法の1つ__《ダーク・スフィア》。

標的を追尾する闇のエネルギー塊を放つ魔法。ネザーがスペルを暗唱して覚えたこの闇魔法は、敵を遠くから攻撃するため__遠距離戦に持ち込むつもりでいたが、ネザーは敵の火球攻撃を防ぐために発動した。

ダーク・スフィアが火球と衝突したことによってキリトは難を逃れたが、全ての攻撃を防ぎ切ることは叶わなかった。安心もできず、すぐにまた次の攻撃がやってくるのは明白。立て続けに発動されるオレンジ色の光がキリトとネザーを翻弄さし、吹き飛ばし、地面に叩きつける。続けてネザーもダーク・スフィアを放つが、敵の攻撃を食い止めるばかりの防戦一方だった。

あくまでゲームとして《痛み》自体は再現していないALOだが、爆烈系魔法の直撃を受けるのはもっとも不快な感覚フィードバックの1つであると言っていい。轟音が脳を揺さぶり、熱感が肌を焼き、衝撃が平衡感覚を痛めつける。その影響は時として現実の肉体にまで及び、覚醒してから数時間も頭痛や目眩いに苦しめられることがあるほどだ。

「う……おおおっ……!」

だがキリトは何度炎に飲み込まれても立ち上がり、剣を振り被った。ネザーもまた、降り注ぐ火球を闇魔法で防ぎ続ける。回復魔法を虚しく唱えながら、リーファはその姿に痛々しいものを感じずにはいられなかった。これはゲームだ、こんな局面に至れば、誰でも諦めて当然なのだ。負けるのは悔しいが、システムの上で動かされている以上、どうにもできない数値的戦力差というものがある。なのに、なぜ__。

これ以上ネザーとキリトの姿を見ているのに耐えられなくなり、リーファは数歩走り寄るとその背中に向かって叫んだ。

「もうういいよ、2人とも!またスイルベーンから何時間か飛べば済むことじゃない!奪われたアイテムだってまた買えばいいよ、もう諦めようよ……!」

だがキリトは、わずかに振り返ると、押し殺した声で言った。

「嫌だ」

その瞳は、周囲を焦がす炎を映して赤く輝いていた。

「俺が生きている間は、パーティーメンバーを殺させやしない。それだけは絶対嫌だ」

今度はネザーがわずかに振り向き、押し殺した声を放つ。

「認めるのは(しゃく)だが……俺もこんな戦いに蹴落とされるのは御免だ」

2人の意地にリーファは言葉を失って立つ尽くした。

どうにもならない窮地に陥った時の反応は、プレイヤーによって様々だ。《その瞬間》を照れ笑いに紛らせようとする者、固く眼を瞑り体を縮めて耐えようとする者、最後まで闇雲に剣を振り回そうとする者。しかし対処の
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