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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十八話 第六次イゼルローン要塞攻略戦
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ァレンシュタインは攻める事よりも退く事を考えているのだろう。どうやって陸戦隊を撤収させるか、それを考えているのに違いない。

昨日、ヴァレンシュタインが撤退案を出した。ヤンの感想は“惜しい”だった。“イゼルローン要塞を攻略に来て何もせずに帰る……。ロボス元帥でなくても難しいだろう。ましてロボス元帥の立場は余りにも弱すぎる、そしてロボス元帥とシトレ元帥は反目している。ロボス元帥の立場が強ければ、或いはロボス、シトレ両元帥が協力体制にあれば、撤退案は受け入れられたかもしれない……”

フォークの作戦案が実行される以上、問題になるのは陸戦隊の撤収だ。その問題を話し合おうと何度かヴァレンシュタインに声をかけたが彼は言を左右にして話し合いに加わらなかった。

“無理に誘うのは止めよう。彼は彼なりに撤収案を考えているのかもしれない”
“しかし、それなら一緒に考えた方が効率が良いだろう”
“彼だってそれは分かっているだろう、その上で一人で考えているのかもしれないよ”
“……”
“そうする必要が有る、彼はそう思っているのかもしれない……”

イゼルローン要塞の表面がまた爆発した。ミサイル艇が再攻撃をかけたらしい。スクリーンには要塞に向けて進撃する強襲揚陸艦の姿が映っている。艦橋では参謀達が興奮した声を上げている。或いは作戦が上手く行くと考え始めたのかもしれない。

「強襲揚陸艦がイゼルローン要塞に接岸しました!」
オペレータの声に艦橋が更に沸いた。
「陸戦隊を要塞内に突入させろ、イゼルローン要塞を奪うのだ!」
「はっ」
ロボス元帥が上機嫌で命令を下した。

陸戦隊か、ローゼンリッターもあの中にいるだろう。シェーンコップ大佐も突入を控えて興奮しているのだろうか……。気持ちの良い男だった、出来れば無事に戻ってきて欲しいものだ。

本当ならあの男が連隊長になるはずだった。だがヴァーンシャッフェ連隊長が准将に昇進しても異動しなかった。本当なら何処かの旅団長になってもおかしくなかったのだがリューネブルクの逆亡命がまだ尾を引いていたようだ。表向きは適当な旅団長職が無いという事だったが連隊長のまま据え置かれた……。

ヴァーンシャッフェがヴァレンシュタインに好意を持たないのもそれが原因だ。ヴァンフリートでリューネブルクを殺しておけば或いは旅団長になれたかもしれない、そう考えているのだろう。そして今回のイゼルローン要塞攻略戦でも要塞内への突入を危険だとするヴァレンシュタインを忌諱している。自分の出世を邪魔する人間だと見ているようだ……。

馬鹿な話だ、ヴァレンシュタインは損害を少なくしようとしただけだ。誰かの出世を阻もうとしたことなどないだろう。彼はフォークとは違う、ヴァーンシャッフェはそのあたりが分かっていない。いや、人間出世や欲が絡む
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