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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十八話 第六次イゼルローン要塞攻略戦
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の挑発行為だ。もちろん同盟軍もその辺は分かっている。要塞主砲(トール・ハンマー)の射程限界、その線上を出入りして敵の突出を狙う。
「D線上のワルツ・ダンス(ワルツ・ダンス・オン・ザ・デッドライン)」、同盟軍が血の教訓によって得た艦隊運動の粋だ。タイミングがずれれば、要塞主砲(トール・ハンマー)の一撃で艦隊が撃滅されてしまう。
そして帝国軍は同盟軍をD線上の内側に引きずり込もうとする。その際、自分たちまで要塞主砲(トール・ハンマー)に撃たれてはならないから、退避する準備も怠らない。D線、まさにデッド・ラインだ。
両軍ともに虚々実々の駆け引きが続くが、これは兵士たちにとって恐ろしいほどの消耗を強いる事になる。イゼルローン要塞攻防戦は同盟にとっても帝国にとっても地獄だ。
「D線上のワルツ・ダンス(ワルツ・ダンス・オン・ザ・デッドライン)」が始まって二時間、ミサイル艇の攻撃を阻む位置に帝国軍艦隊の姿は無い。やはりラインハルトはミュッケンベルガーに受け入れられていない。ロボスも艦隊が居ないことを確認したのだろう。グリーンヒル参謀長に攻撃命令を出した。
「グリーンヒル参謀長、そろそろ攻撃を始めたまえ」
「……はっ」
グリーンヒル参謀長がロボス元帥の命令に頷いた。
妙な感じだ、普通なら参謀長が司令官に提案する形で積極的に作戦実行に関わっていく。ところがグリーンヒルは全く関わろうとしない。ロボスの命令を嫌々実行している。馬鹿馬鹿しくてやってられないのだろう。ロボスもそのあたりは分かっている。不満そうな表情でグリーンヒルを見ている。
帝国軍の艦隊は同盟軍主力部隊の動きを牽制しつつこちらを要塞主砲(トール・ハンマー)の射程内に引きづり込もうとしている。同盟軍主力部隊もそれに応じつつ敵を牽制している。そして、その陰でミサイル艇三千隻が動き出した。要塞主砲(トール・ハンマー)の死角からイゼルローン要塞に対してミサイル攻撃をかけた。
イゼルローン要塞表面の数か所のポイントに数千発のミサイルが集中し次々に爆発した。おそらく要塞内部では混乱で大騒ぎだろう。要塞表面が白く輝く。その姿に艦橋内部でも嘆声が上がった。
「続けてミサイル艇に攻撃させよ! 強襲揚陸艦発進準備! どうだ、見たか!」
ロボスが興奮した声を出した。最後の言葉は誰に向かって言った? 帝国軍か、それとも俺達に対してか? 戦いはまだ始まったばかりだ、総司令官がこの程度で喜んでどうする、馬鹿が。行きはよいよい、帰りは恐い、問題はこれからだ。
宇宙暦 794年 10月 20日 宇宙艦隊総旗艦 アイアース マルコム・ワイドボーン
艦橋が歓声に沸く中、ヴァレンシュタインは冷静にスクリーンを見ていた。周囲の興奮からは全く距離を置いている。やはりヴ
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