第48話<こなきガール>
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この軽くて『きゃしゃ』な艦娘……このグリグリ頭は多分『アイツ』だ。
「比叡か?」
「光栄ですっ、司令ぃ!! やっぱり覚えていて下さったんですね!」
『こなき娘』が言った。いちいちオーバーだな。
この事態に前を歩いていた参謀たちも驚いて振り返る。案の定、呉はニヤついてる。
先頭を歩いていた祥高さんは振り返ると呆れたように言った。
「比叡さん、整備はもう良いんですか?」
「はいっ、お姉様! もう、ばっちりです」
「バッチリ?」
背中越しに言うからモコモコとしか聞こえない。
「おい比叡、いつまで張り付く? ……暑苦しい」
聞こえないのか? 反応がない。
「比叡さん、離れてください」
祥高さんが言うと比叡は『ううっ……』と言いながら、ようやく私の背中から離れた。ちょっと口が尖っている。この辺りのリアクションは以前と全然変わらない。
しかし比叡は私と目が合うと直ぐに直立不動の姿勢をとってビシッと敬礼した。
「司令! ご挨拶が遅れました! 比叡、ただいま美保鎮守府に着任です!」
一瞬、間。爽やかな海風が通り抜けた。
私は言った。
「あれ? ……確か、お前は赤城さんと戦闘の支援任務という命令しか受けていないはずだが」
「あぁン?」
怪訝そうな比叡。その、しかめっ面が姉さん譲りで凄みがある。だが何しろ比叡は基本が可愛い系だから、どう凄んでも無理があるな。
「えっと……」
私もどうしたものか立ったまま悩んでしまう。
艦娘ってのは上官の命令に対して素直に反応する子と、そうでない子が居るから参る。戦艦系……実は金剛姉妹は特に強情な子が多いから困る。
そんな比叡は、さっきから固まっている。しかも目がウルウルしているぞ。おいおいマジかよ?
「司令は……私なんか……」
何か上目遣いにブツブツと言っているし。涙を溜めつつ据わった目が怖い……ブラック比叡か?
私の背後からは何となく呉や神戸の好奇な視線を感じる。お前らもこの状況を楽しんでいるだろっ。
そんな私の気持ちを察したのか呉が言う。
「いや決してそんな……心配しております」
「艦娘の扱い、対応、実に勉強になります」
「……」
見かねた祥高さんも近寄ってくる。
「比叡さん?」
すると向こうから大淀さんが走ってきた。
「司令ぇ!」
あれ? ……そういえば大淀さんが走るところを初めて見た気がする。妙に走り難そうだが。
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