暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
記憶
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、無口だったが仕事は正確だった女性の店員NPCも、何人かの客を怒鳴って追い出したカウンターも、ついつい寝落ちするほどに心地よい安楽椅子も、どれもこれも見る影もない。

「――ョ――キ! ……そうだ、確か……」

 それでも今の里香の思考には、思い出せない彼に助けを求める他なく。痙攣を起こしたように震える身体と、その震えに反比例したかのように回らない思考を巡らせると。つい先程、誰かが……誰だったかは思い出せないが、とにかく誰かが『素材を取りに行く』と行っていたことを思い出すと、勢いよく何の店だったか分からない扉を開ける。

「嘘でしょ……」

 店の外には、もはや何もなく。どこまでも広がり、どこまでも沈んでいく、そう直感できる漆黒に染まっていた。もはや自らが見ている夢だという事すら忘れた里香は、目の前の光景に絶望するかのように膝をついた。店の外観すらも壊れていき、次の瞬間には店も原型を留めなくなるだろう時に、里香はようやく彼を見つけ出した。

「――――――――!」

 見たこともない後ろ姿の少女とともに、闇の中を歩いていく黒いコートを着た少年に対して、里香は助けを求めるかのように手を伸ばした。しかして、名前も分からない相手に助けを求められる訳もないとばかりに、その手は空を切っていて。

 最後まで残っていた何かの店が消え去っていくとともに、里香の意識も漆黒の中に沈んでいった。

「ぁ……夢、よね……?」

 先の《オーディナル・スケール》による、アステリオス・ザ・トーラスキング戦からしばらく。日付で言えば更新されているが、時刻で言えば数時間程度の後のこと。深夜に飛び起こされた里香は、スマホを見てそんな時刻であることを確認する。

「っ……!」

 そのまま時刻を確認するだけではなく、手が勝手に彼に――ショウキに連絡に取ろうとするのを必死に押し留めると、もう身体が勝手に動かないようにスマホを届かないところに放り投げる。

「あた……しは……」

 これでショウキに連絡してしまうことはない――と、そうして全身に流れる嫌な汗を感じながらも、里香は再び眠りに堕ちていった。



「リズ!」

 学校を終えてALOにログインするとともに、フレンドリストを見て彼女がこちらの世界に来ていることを確認しながら、その名を叫んで部屋から飛び出した。その先は俺とリズの仕事場である鍛冶工房となっており、目当ての彼女は今まさに鍛治を手がけようとしているところだった。

「わっ! ……ビックリしたぁ。どうしたのよ、そんな大声出して」

「ビックリしたのはこっちの台詞だよ、連絡もつかず学校にも来ず」

 本日、SAO生還者学校に顔を出さなかったリズは、携帯や《オーグマー》の方にも連絡はまるで届かず。何があったか心
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