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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十七話 イゼルローン要塞へ
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ン大佐」
言葉とは裏腹に好意の欠片も感じられない口調でした。ロボス元帥が顔を歪めてヴァレンシュタイン大佐を見ています。その姿に艦橋の興奮は瞬時に消えました。

「全く面白い作戦案だ。ところで一つ確認したいことが有る」
「なんでしょうか」
「次の艦隊決戦だが総司令官は誰だ?」
「……」

ヴァレンシュタイン大佐は沈黙しています。その姿にロボス元帥が顔を歪めて笑いました。
「そこにいるグリーンヒル参謀長か?」
「閣下、何を言うのです」

ロボス元帥の言葉にグリーンヒル参謀長が顔を強張らせて抗議しました。ですがロボス元帥は厭な眼でグリーンヒル参謀長を見ています。その視線にグリーンヒル参謀長は口籠りました。

「……失礼ですが小官には人事権は有りませんので分かりかねます」
ヴァレンシュタイン大佐の言葉にロボス元帥がまた笑いました。明らかにロボス元帥はヴァレンシュタイン大佐を嘲笑しています。

「そうかな、貴官はシトレ本部長ともトリューニヒト国防委員長とも親しい。貴官が進言すれば私を首にして参謀長を総司令官にすることも容易いのではないかな」

ロボス元帥の言葉にヴァレンシュタイン大佐は何の感情も読み取れない声で答えました。
「何か誤解があるようです。小官はシトレ本部長ともトリューニヒト国防委員長とも親しくは有りません」

「ヴァンフリートでは貴官の望みは全てかなえられた。そして会戦後は二階級昇進だ。それでも親しくはないと?」
「何度でも言いますが親しくは有りません」

ロボス元帥とヴァレンシュタイン大佐は互いの顔を見ていました。元帥は明らかに敵意を持って、そして大佐は無表情に相手を見ています。ロボス元帥が低い声で笑い声を上げました。

「確かに面白い作戦案だ。だが、敵がこちらの思惑通りに動くとは限らん。貴官の作戦案は総司令官として却下する。グリーンヒル参謀長、イゼルローン要塞へ向けて艦隊を進めたまえ。これは命令だ!」

重苦しい空気の中、グリーンヒル参謀長が艦隊をイゼルローン方面に進めるように指示を出しました。ロボス元帥はそれを見届け、微かに唇を歪めてから指揮官席に腰を下ろします。艦橋に居る参謀達は皆、暗い表情で顔を合わせようとはしません。

ワイドボーン大佐もヤン大佐も同じです。そしてヴァレンシュタイン大佐は無言で席を立つと艦橋を出て行こうとしました。ロボス元帥がそれを見て低く笑い声を上げます。大佐にも聞こえたはずですが、大佐は振り返ることなく艦橋を出ていきました。



なかなか帰ってこないヴァレンシュタイン大佐が心配になって、探しに行ったのは三十分程経ってからの事でした。大佐はサロンに居ました。怒っている様子は有りません、どちらかと言えば悩んでいる感じです。椅子に腰かけ少し顔を俯き加減にしてい
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