暁 〜小説投稿サイト〜
世界最年少のプロゲーマーが女性の世界に
25話 日常回その2
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口をつけて、その渋みに顔を顰めそうになるが、それよりもこの面白そうな空気に自然と笑顔になる。

 紅茶の入ったカップはサイドテーブルに置き、立ち上がる。

「あ、先輩を無視するんだー。よぉーし、それならこっちにも考えがあるわよー!」

 鬼一の反応が遅れるほどの身のこなしを見せた楯無はあっという間に鬼一を捕獲。迷いなくそのまま鬼一をベッドの上に放り投げる。

「うおおおおおっ!?」

 投げられた勢いをそのままにベッドに着弾。スプリングは衝撃を受け止め、鬼一に跳ね返した。

 勢い余った鬼一はベッドから転げ落ちる。

「突然何するんですかあなたは!?」

「だぁって鬼一くん、何も話してくれないから面白くないんだもん」

「面白い面白くないで人をブン投げるのは止めてください! ホントに心臓に悪い!」

 鼓動がいつもより早くなった心臓を落ち着かせながら鬼一は楯無に言い返す。

「じゃあ話してよー。退屈なんだもん」

「もん、じゃないです。なんとなく予想ついてるんだったら僕がいちいち話す必要もないじゃないですか」

「いやいや鬼一くん、キミは何もわかっていない。本人から聞くことに意味があるんだよ」

 立ち上がった鬼一は楯無を無視することにして、机の上に置いてある紅茶に口をつける。が、やはり不味いそれに顔を歪ませた。

「……」

「……電話?」

 鬼一の携帯電話から電子音が鳴り響く。

「……!」

 ディスプレイに表示されたその名前を見た瞬間、鬼一は驚きを隠せなかった。それは自分にとっては一言では言い表せない人間。保護者、師、ライバル、戦友、色々と該当する言葉はあるがどれも違う。もっと複雑な関係。

 だけど、鬼一は一瞬だけ顔をほころばせた。

「お疲れ様です。月夜です。お久しぶりですアヤネさん」

『はいお疲れ。割と久しぶりだね。元気にしてた?』

 半年にも満たない期間ではあったが、やけに懐かしく感じられるその声。数多くいる現役プロゲーマーの中で、鬼一が破るまでは3年連続でワールドリーグを優勝した『最強』と呼ばれた女性。

「元気にやってますよ。アヤネさんこそ、アジアカップベスト4おめでとうございます。これで6年連続でしたっけ?」

 内から湧き上がる感情を必死に抑えながら普通に話す。

『さぁ? あんまり記録とかは意識してるわけじゃないからさ。そんなことよりも明日時間ある?』

 アヤネも鬼一の感情を理解している。付き合いは決して短くない。それを分かっているからこそアヤネも以前と同じように鬼一に話す。

「明日……ですか? アヤネさん、明日はアジアカップの準決勝と決勝じゃないですか」

『いいの。柿原さんと鬼一がいなかったら私の優勝は揺
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