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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
アルンへの旅路
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足早にチューブから風の塔最上部の展望デッキに飛び出す。数え切れないほど訪れたことのある場所だが、四方に広がる大パノラマは何度見ても心が浮き立つ。

シルフ領は、アルヴヘイムの南西に位置する。西側は、しばらく草原が続いた後すぐに海岸となっており、その向こうは無限の大海原が青く輝いている。東は深い森がどこまでも(つら)なり、その奥には高い山脈が薄紫色に連なる。その稜線(りょうせん)の更に彼方に、ほとんど空と同化した色で一際高く聳える影__世界樹。

「うお……すごい眺めだな!」

リーファに続いてエレベーターを降りたキリトが、眼を細めてぐるりと周囲を見回した。

「空が近いな……。手が届きそうだ……」

「……届くわけないだろ」

ロマンチックな雰囲気を壊しかけるネザーの小声は耳に入らず、瞳に憧憬(しょうけい)にも似た色を浮かべて青い空を仰ぎ見るキリトに並んで、リーファはそっと右手を空に翳し、言った。

「でしょ。この空を見てると、ちっちゃく思えるよね、いろんなことが」

「「………」」

ネザーとキリトが気遣わしげな視線を向けてくる。それに笑顔を返し、リーファは言葉を続けた。

「……いいきっかけだったよ。いつかはここを出ていこうと思ってたの。1人じゃ怖くて、なかなか決心がつかなかったんだけど……」

「そうか。……でも、なんだか、喧嘩別れみたいな形にさせちゃって……」

「あのシグルドって奴の下じゃ、どっちにしろ穏便には抜けられなかったはずだ」

その先は、リーファの独り言だった。

「なんで、ああやって縛ったり縛られたりしたがるのかな……。せっかく、翅があるのにね……」

その時。

キリトの着ているジャケットの大きな襟の下から顔を出したユイが、疑問を抱いたかのように口を動かした。

「複雑なんですね、人間は」

キラランと音を立てて飛び立つと、キリトの肩に着地し、小さな腕を組んで首を(かし)げる。

「人を求める心を、あんな風にややこしく表現する心理は理解できません」

彼女がプログラムであることも一瞬忘れ、、リーファはユイの顔を覗き込んだ。

「求める……?」

「他者の心を求める衝動が人間の基本的な行動原理だとわたしは理解しています。故にそれはわたしのベースメントでもあるのですが、わたしなら……」

ユイは突然キリトの頬に手を添えると、(かが)み込んで音高くキスをした。

「こうします。とてもシンプルで明確です」

呆気に取られて眼を丸くするリーファの前で、キリトは苦笑いしながら指先でユイの頭を突いた。

「人間の世界はもうちょっとややこしい場所なんだよ。気安くそんな真似したらハラスメントでバンされちゃうよ」

「手順と様式というものです
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