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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
脱領
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し、キリトの肘を()()いた。

「出発する前に少しブレーキングの練習しとく?」

「……いいよ。今後は安全運転することにしたから」

「この場合は安全飛行と言うべきだ」

「あ、ああ、そうだな」

キリトが唖然とした表情で答える。

「それはそうと、なんで塔に?用事でもあるのか?」

「ああ……長距離を飛ぶ時は塔の天辺から出発するのよ。高度が稼げるから」

「なるほどね」

頷くキリトの背を押しながら、リーファは歩き出した。

「さ、行こ!夜までに森を抜けておきたいね」

「俺達はこの世界の地理がわからないからなぁ。案内よろしく」

「任せなさい!」

トンと胸を叩いてから、ふと思いついて視線を塔の奥へと移す。

そこには、シリフ領主館の壮麗(そうれい)なシルエットが朝焼けに浮かんでいた。館の主人である《サクヤ》という名の女性プレイヤーとは旧知の仲なので、しばらく街を離れると挨拶しておこうかと一瞬考えたのだが、建物の中心に屹立(きつりつ)する細いポールにはシルフの紋章旗が()がっていない。滅多にあることではないが、今日は1日領主が不在だという印だ。

「どうかしたのか?」

首を傾げるキリトに、ううん、とリーファは首を振った。サクヤには夜からメールしておこうと考え、気を取り直して風の塔の正面扉をくぐって内部へと進む。

1階は円形の広大なロビーになっており、周囲をぐるりと色々なショップの類が取り囲んでいる。ロビーの中央には魔法力で動くとおぼしきエレベーターが二基設置され、定期的にプレイヤーを吸い込んだり吐き出したりしている。アルヴヘイム時間では夜が明けたばかりだが、現実では夕方に差し掛かっているので、行き交う人の数がそろそろ増え始める頃だ。

ちょうど降りてきた右側のエレベーターに駆け込もうとした、その時。

不意に傍らから数人のプレイヤーが現れ、3人の行く手を塞いだ。激突する寸前で、どうにか翅を広げて踏みとどまる。

「ちょっと危ないじゃない!」

反射的に文句を言いながら、目の前に立ち塞がる長身の男を見上げると、それはリーファのよく知った顔だった。

シルフにしてはずば抜けた背丈に、荒削りだが男っぽく整った顔、この外見を手に入れるためには、かなりの幸運か、かなりの投資が必要だったと思われる。体はやや厚めの銀のアーマーに包み、腰にはおお振りのブロードソード。額に幅広の銀のバンドを巻き、波打つ濃緑の髪を肩の下まで垂らしている。

男の名前は《シグルド》。ここ数週間リーファが行動を共にしているパーティーの前衛だ。見れば、彼の両脇に控えているのもパーティーメンバーである。レコンもいるのかと思って更に周囲に眼をやったが、目立つ黄緑色の髪は視界に入らなかった。

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