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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
スイルベーン
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がらひとしきり(もだ)える。

ネザーという無愛想な少年と違い、もう1人はとても不思議な少年だった。いや、プレイヤーとしての彼が少年かどうかはわからないが、直葉の勘は自分大差ない年齢だろうと告げている。しかしその割りには落ち着いた物腰、かと思うとやんちゃな言動、どうにも掴み所がなかった。

謎なのは性格だけではない。剣を交えても多分勝てない、と思わされた相手は1年のALO歴の中でも初めてだった。ごく小さく、自分が興味を持つその少年の名前を口に出す。

「キリト君……か……」











仮想世界を自分の眼で見てみたい、と直葉が初めて思ったのは、SAO事件後1年が経とうとした頃だった。

それまでの直葉にとって、VRMMOゲームというのは、比喩(ひゆ)ではなく文字通りに兄を奪っていった憎悪の対象でしかなかった。だが病室で眠る和人の手を握り、語りかけるうちに、いつしか和人(かずと)がそこまで愛した世界というのはどういうものなのだろうか、という気持ちが芽生えはじめたのだった。和人のことを、もっと知りたい__そのためには、彼の世界を自分の眼で見なければ。自分から、兄との距離を縮める努力をしなくてはと、そう思ったのだ。

アミュスフィアが欲しい、と言った時、母はしばらくじっと直葉の顔を見ていたが、やがてゆっくり頷き、時間と体にだけは気をつけなさい、と笑った。

その翌日、学校の昼休みに直葉は、クラスで1番のゲームマニアと称され__あるいは揶揄(やゆ)されていた長田慎一の机の前に立ち、聞きたいことがあるから屋上まで付き合って、と告げた。その時クラスに満ちた沈黙、次いで驚愕は今でも語り草となっている。

屋上の金網(かなあみ)にもたれた直葉は、妙な期待に眼を輝かせながら直立不動で立つ長田慎一に向かって、VRMMOのことを教えてほしいと言った。長田は数秒間の百面相の後、どういうタイプのが希望なのか、と訊いてきた。

直葉としては、勉強と剣道部の練習に割く時間を減らすわけにはいかなかったのでそのように言うと、長田は眼鏡をせわしなく押し上げながら「ふむ、じゃあ、あんまり廃仕様じゃなくて、スキル制のやつがいいよね」等々とぶつぶつ呟いた挙句、推薦してきたのがアルヴヘイム・オンラインだったというわけだ。

よもや長田が一緒にALOを始めるとは思わなかったが、彼の懇切(こんせつ)丁寧(ていねい)なレクチャーもあって、直葉は自分でも驚くほどの速さで仮想ゲーム世界に適合してしまった。その理由は主に2つ。

1つ目は、直葉が長年ずっと研鑽(けんさん)を積んだ剣道の技が、ALO内部でも有効に機能したからだ。

一般的に、プレイヤー同士の戦闘では、基本的に回避ということは考えない。敵の攻撃を食らいつつ自分の武器をヒッ
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