暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
妖精の世界
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りを感じる。それを意識しただけで、キリトの目頭(めがしら)が熱くなっていく。

神様、お願いします。

胸の中でそう念じながら、キリトは人差し指の先でそっとクリスタルを二度叩いた。その途端、手の中で白純の光が爆発した。

「あっ……!?」

声を漏らしながら、腰を浮かせて1歩下がり、丁度俺とぴったり一列に並んだ状態になった。

光の結晶はキリトの手を離れ、地上から2メートルほどの高さで停止した。光はどんどん強くなる。周囲の木々が青白く染め上げられ、月すらその輝きを失う。

2人が眼をいっぱいに開いて見守る中、渦巻く白光の中心部分に1つの影が生まれ始めた。それは徐々に形を変え、色彩を纏っていく。四方に(たな)()く長い黒髪。白純のワンピース。スラリと伸びた手足。瞼を閉じ、両手を胸の前で組み合わせた1人の少女が、まるで光そのものの化身(けしん)でもあるかのような輝きを纏いながら、フワリと2人の眼前(がんぜん)に舞い降りてきた。

光の爆発は、始まった時と同じように唐突(とうとつ)に消え去った。地上から少し浮いた場所で静止した少女の長い睫毛(まつげ)が震え、両眼が静かに開いていく。やがて、夜空のように深い色の瞳が、まっすぐに2人を見つめた。

2人は動かなかった。声が出ない。瞬きすらできない。

そんな2人を見ていた少女の、桜色の唇がゆっくりと(ほころ)んだ。天使のような微笑。それに勇気づけられたように、キリトが口を開いた。

「俺だよ……ユイ。わかるか?」

続いて少女__ユイはハッとして唇を動かし、懐かしい鈴の音のような声が響いた。

「また、会えましたね、パパ」

大粒の涙を煌かせながら、両手を差し伸べたユイがキリトの胸に飛び込んできた。

「パパ……パパ!!」

何度も叫びながら、細い腕をキリトの首に固く回し、頬を摺り寄せる。キリトもその小さな体をギュッと抱きしめる。喉の奥から堪え切れない嗚咽(おえつ)が漏れる。

《ユイ》。今は無きSAO世界で出会い、たった3日だけ一緒に暮らし、そして消えてしまった少女。短い時間だったが、あの日々はキリトの中で掛け替えのない記憶として焼き付いていた。アインクラッドでの長く辛い戦いの中、間違いなくキリトが真に幸福だと感じていたあのわずかな日々。

郷愁(きょうしゅう)にも似た切ない甘さに包まれながら、キリトはユイを固く抱いたままいつまでも立ち尽くしていた。傍らからその光景をただ眺める俺には、懐かしい風景を見ているようだった。

だが、どれだけ望もうが祈ろうが、あの幸せだった頃の人生は__二度と戻ってこないのだから。





「で、こりゃ一体どういうことなんだろ?」

森の中、先刻(せんこく)墜落(ついらく)した空き地の片隅に手
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