暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
終盤
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見下ろした。

「さて、私はそろそろ行くよ」

風が吹き、それに掻き消されるように姿を消した。

「これで……この世界ともおさらば……か」

俺__ネザーという存在を形作っていた境界が消滅し、拡散する。

全て__消えていく。











空気に匂いがある。

鼻孔(びこう)に流れ込んでくる空気には大量の情報が含まれている。乾いた布の日向臭い匂い。果物の甘い香り。

ゆっくり眼を開ける。その途端、強烈な白い光を感じ、慌てて瞼をギュッと閉じる。

改めて眼を開けてみる。何か柔らかいものの上に横たわっているようだった。天井らしきものが見える。オフホワイトの光沢のあるパネルが格子状に並び、そのうちいくつかは、奥に光源があるらしく柔らかく発光している。金属でできたスリットが視界の端にある。空調装置のようだ。低い唸り上げながら空気を吐き出している。

俺は眼を見開いた。ここがアインクラッドではないという思考によってようやく意識が覚醒した。右肩を数センチ上げ、自分の体に掛けられている布から上体を起こし、自分の右腕を目の前に持ち上げた。

自分の掌を見つめてみたが、何の変哲もない手だった。恐ろしいほどに痩せ細っていると思ったが、よく見てみると__アインクラッドで何度も振るった腕と同じだった。関節に細かい(しわ)が寄ってなく、皮膚の下に青みがかった血管が走っていない。右腕に次いで、もう片方の腕、そして上体に眼をやった。肉体は少し成長していた。体に包帯の巻かれた箇所がいくつかあったが、それ以外特に酷い箇所はなく、痛みもそれほど感じない。正常そのものだった。自分の体は普通の人間と同等の機能を持っていないのはわかっていたが、2年も仮想世界に囚われていたにしては異常に思えた。

驚くのは後回しにして視線を周囲に向け、ここがどこなのか探り始めた。

俺が横たわっているのは、どうやら密度の高いジェル素材のベットらしい。体温よりやや低い、冷んやりと濡れたような感触が伝わってくる。俺は全裸でその上に寝ていたということだ。

今自分がいる部屋は、壁は天井と同じオフホワイト。右には大きな窓があり、白いカーテンが下がっている。カーテンが下がっていない部分の窓から外を見ると、大海原が見え、太陽が登り詰めていた。ジェルベットの左手奥には金属製のワゴントレイがあり、(とう)(かご)が載っている。籠には控え目な色彩の花が大きな束で生けられており、甘い匂いの元はこれらしい。ワゴンの奥には四角いドアが閉じられている。ベットの背後や周りには、何やら特殊な装置がいろいろ設置されている、見たところ最新鋭の医療機材や端末装置といったところだろう。

得られた情報から推測するに、おそらくここは太平洋の真ん中に浮かぶ《ZE
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