暁 〜小説投稿サイト〜
俺たちで文豪ストレイドッグスやってみた。
第1話「舞えない黒蝶のバレリーナ」
[6/6]

[9] 最初 [2]次話
るばかりで、その顔からは一筋の善性すら感じられない。この女は、本当に、根っこからの悪人だ。自分ではどう足掻いても、この女をどうこうする事は出来ない。

 今引き金が引かれれば、自分の命は簡単に消えて無くなってしまう。死にたくない。こんな事に巻き込まれて死んでしまうなんて、絶対に嫌だ。けれど。

 けれど――

「……やだ」

 この力で、こんな奴らの悪事に協力して、誰かを不幸にしてしまうなんて、もっと嫌だ――!

「嫌です……この能力は、悪事なんかに使うものじゃない……っ、貴女達の一員になんかならない……!」

「そうですか……仕方ないですね。時間を無駄にしましたか」

 女がトリガーに指を掛け、引き金を引く。同時に黒服の男達が一斉に銃撃を引き起こし、無数の弾丸が撃ち放たれた。

 黄金色の弾丸が亜音速を超え、空気を引き裂き、彼女の身を幾重にも貫こうと、暴力的なまでの力を以って飛来する。自身の終わりを察して、恐怖に蝕まれて、ぎゅっと目を瞑った。

 ――。

 ――――。

 ――――――?

「……っ、やはり、気付いていましたか……!」

 そんな、女の声が聞こえた。
 まだ自分は死んでいないのか、確かに銃弾は撃たれたはずなのに。そう不思議に思ってゆっくりと目を開けると、黒服の男達とその女から道を遮るように、二人の男女が立っていた。

「あー、大丈夫ですかー?お怪我はないでしょーか?」

 長く伸びた髪をツインテールにした少女が彼女に手を差し伸べ、何処か間の抜けた声音で言う。もう一人の男は何処かで見た覚えがあり、それが以前話し掛けてきた二人の男の片割れだと気付いた。

「い、今……撃たれた、のに……」

「あー、それに関しては大丈夫ですよー。ウチのなんでもあり枠がどうにかしましたからー」

 にっこりと笑顔を浮かべて背後の男を指す少女に従い視線を移すと、その男の両手からポロポロと銃弾が零れ落ちた所だった。

 その光景を見て、今までただ冷たい表情を浮かべるだけだった女の顔に、初めて表情が浮かぶ。忌々しげに、憎々しげに、女は彼を睨み付けた。

「……三國、健」

「お久しぶり、『カミサキ』」




――あぁ。
 ここは、もう既に、日常の通じる世界ではなくなってしまったらしい――。
[9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ